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日本国憲法の制定過程から学ぶ 衆議院本会議での北昤吉議員の質疑【2】 〈寄稿〉文/小川光夫 No.70

公開:2011年5月27日

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 北議員の質疑は国会の審議の在り方について示唆を与えるものである。帝国憲法改正案第4章の「国会」については、北議員は、「國會は、國權の最高機關であって、國の唯一の立法機關である」としているが、アメリカの憲法では「立法機関は議会に属する」とあるだけで、「国権の最高機関」という言葉はない。帝国憲法改正案においても「国権の最高機関」としながら、一方では天皇が解散する権利を持っており、立法機関で作られた法律も最高裁判所で否定されれば失効することになっている。この点について考える必要があるのではないのか、と指摘している。北議員がいうように、条文では国会を「国権の最高機関」と定めていることについては明確に示されていない。我が国の憲法は第7条三号で「内閣の助言と承認により天皇が衆議院を解散する」、また第81条では「国会の制定した法律に対して裁判所が違憲立法審査権を発動する」などとなっており、必ずしも国会が他の機関よりも優位的地位にあるとは考えにくいのである。この見解については、憲法学者の中でも最高機関という資格が単なる「政治的美称」にすぎないことを強調する見方と、国会が「唯一の立法機関」として制定した法律によって、行政権と司法権を拘束し、予算の議決や条約締結の承認及び内閣総理大臣の指名を通じて、国政全般におよぼす力や法的単位の「総括的表現」であると理解する見方がある。しかしどちらにしても共産圏で見られるような国会を「国権の最高機関」とすることは論理的にありえない。私は、この最高機関については、むしろ民政局の行政小委員会の担当者であったエスマン陸軍中尉が、憲法条文の作成にあたって、強い行政府を強硬に述べていたことに起因しているのではないかと思っている。上司であるケーディス大佐は国会中心主義を標榜しエスマンを日光の旅行として島流しにするが、これは民意を反映する議会をあまりにも尊重し過ぎたケーディス大佐の意識の産物であったのではないか、と考えている。また、第39条では、「両議院は、全國民を代表する選擧された議員でこれを組織する。両議院の議員の定数は、法律でこれを定める」とあったが、北議員は「参議院と衆議院を一つの条文で規定しているものの、参議院の構成について十分に示されていない。しかも参議院も衆議院もこれを選挙することになると、参議院がもし地域的な選挙であるのならば、衆議院と似た者が当選し、二院制度の根拠が薄弱となる。二院が同じ程度のものならばそれは無用である。つまり衆議院が非常に優越していて、参議院が衆議院を通過したものを総て鵜呑みするのであるのなら、参議院は二重の手数であり、参議院はなくてもよい。また参議院が非常に権能を上げて衆議院を妨害するのならば、これは有害で排除すべきことである。日本の将来文化国家を建設するために上院(参議院)を設けるのならば職能代表者的な意味を加えて、文化各方面で活動したものを集めるような仕組みであっていいのではないか」と述べている。もともと参議院を含む二院制については、商法学者である松本国務大臣(憲法の専門家ではない)が考えた案であり、また民政局の方でも誰とて憲法の専門家はいなかったことにも起因しているのではないか。参議院がどうあるべきか、もう少し議論の余地があったのではないか。
 

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