戦没者の家族でつくる「二宮町遺族会」が、町内に住む会員の証言を「戦時中・戦後体験記」としてまとめた。同会広報委員で冊子の編集に携わった原律子さん(73)は「会員の高齢化に直面するなか、証言を活字に残すことで戦争の悲惨さを後世に伝えたい」と話す。
同会は、戦没者の慰霊や遺族の福祉増進を目的に終戦後間もなく発足した。20年前には300人いた会員も、高齢化で148人に減少するなど「記憶の風化」を懸念する声があったといい、3年前から会員の戦争体験をまとめた冊子の製作に取り掛かった。
会員からの寄稿や聞き取りによって、出征地で戦死した父親や夫を持つ家族など26人の体験談を集め、原さんが中心となって編集を加えた。原さんは「遺児の方々は高齢のため、訪問を短時間で切り上げたり、退院や体調の回復を待ったりして時間はかかったが、多くの方に優しく対応していただいた」と会員の協力に感謝する。
3人姉妹の長女として生まれた女性会員は、小学1年生の時に父親が戦死。同年に祖母、数年後には病気だった母親が他界し、幼くして一家の世帯主になった。生前の母親から「自分が亡くなったらおまえに頼むしかないから」と、炊飯時の水加減や火の始末を教わったことなど、幼くして味わった辛い経験を克明に語った。スマトラ島に出征した記憶をたどった男性は「戦争なんて無意味です。こりごりです」と胸の内を吐露し、戦争の愚かさを伝えている。
原さんは「平和の大切さを次世代につなげるために、辛い苦労話を涙しながら思い出していただき、ともに泣いたこともあった」と編集作業を振り返る。冊子は200部を印刷し、町内の小中高校や近隣自治体の図書館などに寄贈した。「戦争を知らない若い世代にも、教科書には載らない戦争体験者の生の声を知ってほしい」と原さんは話している。
問い合わせは原さん【電話】0463・71・0118。
職場体験 二宮中学生が取材同行
トップ記事の取材には、タウンニュース大磯・二宮・中井編集室で職場体験を行った二宮中学校2年の中澤颯也さんが同行した。
中澤さんは、訪問した原律子さん宅で取材メモを取り、写真撮影にも挑戦=写真。「取材に同行して、戦争のことについて少し分かったような気がした。終戦から71年が経ち、実際に戦争を体験した人が減り、記憶が風化していくなか、こうして戦争について聞く機会も少なくなっていくと思う。戦争に関する資料を読んだり、戦争についての話を聞いたりすることが大切になってくると感じた」と感想を話していた。
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