居住空間の拡大でまちの姿は変わっていくのか。横須賀中央地区で計画段階も含めて、複数の中高層マンション建設が進んでいる。市の中心市街地であり、商業や医療施設など「都市機能」の集約を誘導する区域でもある同エリア。その現状を調べた。
横須賀市の開発指導課によると、同地区の大滝町・若松町・日の出町で事業者からの「土地利用関連法令確認」の申出で建設計画が進んでいる中高層建築物は6件。20m以上(おおよそ5階以上)の建物で、既存建物の建て替えや駐車場用地の転用などさまざまだ。内訳は、住居のみの共同住宅が3件、1階等に店舗が入る建物は3件で、建設予定6件の総戸数は約460戸にのぼり、「マンション建設ラッシュ」の状況を呈している。同課は「(計画の)申出数は以前よりも増えている。現在進行中のもの以外にも相談がいくつかある」と話す。
また、横須賀中央駅前の若松1丁目地区(プライム一帯)では、商業施設とホテル、264戸の住居を含んだ複合ビルの再開発事業が進んでいる。単純計算で言うと、同地区では向こう10年の間に約700戸以上の住居が「増加」することになる。
転入期待も市内移住中心か
横須賀中央地区の大規模マンション開発の発端は、2015年竣工の「ザ・タワー横須賀(リドレ横須賀、38階/297戸)」。再開発事業として、中心市街地での複合タワーマンション建設が話題になった。市は、建て替えにおける固定資産税減免や容積率の引き上げなど高度利用の規制を緩和。交通や買い物の利便性が高く、日々の生活が徒歩圏で完結させられる便利さがメリットにあげられた。
これ以降も20年に横須賀警察署跡地で新たなマンション(17階/212戸)が竣工、駅近で平坦、商業施設や官公庁があり至便な立地であることをアピールしており、「まちなか居住」を加速させた。
世帯数は微減
マンションの建設が続く中で、同エリアを含む本庁地区の人口動態を見ると、15年1月時点で6万2226人(2万8156世帯)、16年同時点では6万2878人(2万8858世帯)と増加、これをピークに人口減に転じた。昨年1月時点では5万8296人(2万8289世帯)。世帯数は微減にとどまっている。
同地区の不動産事業者は「市外からの人口流入ではなく、市内の郊外から平坦な駅前の利便性を求めて移住する人、比較的年代の高い世帯が多い」と分析する。若松町の飲食店店主は「ファミリー世帯が増えたという実感はあまりない」と言う。「商店街の機能も変化している。数年後、住居の需要と供給のバランスが成り立っているのか心配」と加えた。
「住む町」の魅力づくり
そうした状況のなかで、中央地区連合町内会長の上田滋さんは「地域を”作る”という視点も必要」と話す。大滝町会では「ザ・タワー横須賀」の住民に町内会への参加を呼びかけたところ、約90人が説明会に出席したという。「高齢世帯が多く、これまで住んでいた地域と同様な地元のつながりを求めている人が多いのでは」と推察する。地域自らが動かないと「自分たちの街はできない」と話す上田さん。町内の事業者や住民、行政、学校などを巻き込んだまちづくりの必要性を説く。
中心市街地の再開発に際し、地元町内会や商店街組合は「横須賀中央エリアまちづくり検討会議」を立ち上げて市街地空間の在り方について議論。18年にエリア内での再開発事業や建て替えの際の「ガイドライン」を作成している。これをもとに、「景観協議会」が緑化や歩行空間の確保、外観の色彩などに関して開発事業者との協議を行っている。
同地区では若松町1丁目地区以外に再開発を検討しているエリアが5つ。「住む町」の将来像をどう描いていくのか。市では「まち全体の賑わい創出」「まちの再興」に向け、これらの地区の事業化に向けた支援を行っていくという。
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