三浦版 掲載号:2016年1月1日号 エリアトップへ

座談会 若者が拓く地域農業の未来 小泉進次郎氏×三浦半島の生産者

文化

掲載号:2016年1月1日号

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 従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大、TPPなど転換期を迎えている日本の農業。難題を抱えながらも三浦半島で奮闘する6人の若き生産者と、昨年自民党の農林部会長に就任した小泉進次郎衆議院議員に、現場と政府の方針それぞれの立場から農業の今と未来を語ってもらった。

岩澤 横須賀市の林で主に露地野菜を作っています。小泉さんが農林部会長になられて、農業のイメージがガラッと変わったというか、大きな期待を農家の皆が持っています。

鈴木 自分も露地野菜中心で主に飲食店さんに卸しています。カラフルなものや生で食べられるものを広く作っています。

山森 「(株)元気もりもり山森農園」という会社で代表をしています。

高梨 三浦市で農業をやっています。父が代表ですが(株)高梨農園の後継者です。主に露地野菜を自社直売所・スーパーの地場野菜コーナー8店舗に出荷しており、加工品作りにも力を入れて、野菜を色々な形で提案できたらと思っています。

下里 去年から親父の跡を継ぐために戻ってきました。やり始めたら農業面白いぞ、と感じています。重量野菜、三浦大根・青首大根を紀伊国屋さんや成城石井さんなどで扱ってもらっています。もっとPRできるよう、親父の考えないようなところで工夫して盛り上げていきたいです。

永島 僕は奥さんが農家の後継ぎというところから農業に入りました。今は時季を分けてシイタケとキクラゲを通年で出荷しています。場所は横浜市の金沢文庫です。生まれが農家じゃないところを強みにしていきたいです。

経営者視点の重要性

岩澤 今の横須賀は農業の先に飲食店さんがあって、ギアが噛み合い始めてきました。飲食店さんから「美味しい」と言われることに農業のやりがい、面白みを感じています。農業はやり方、売り方次第で変わってくると思います。ただ作って売る、そんな時代は終わったので。

小泉 今の話はとても大事で、実は国の農政の中でも重要視しています。一言で言うと農家目線から消費者目線。発想の転換です。どうやったら買ってもらえるのか。この発想をもっと農業の中に入れなければいけません。

岩澤 結局、消費者のニーズですね。あとはその先に加工してくれる場があれば。無駄なく、傷があってもいいから買ってくれるところがあるともっと良いなと思うんですが。

高梨 うちでは最初、余った物や傷物がもったいなくて加工品を始めました。会社を経営する中で思ったのは、いくらで売れるか分からない物だけを作っているというのはすごく危険だということ。だから定価のある加工品を生産しています。

小泉 今、国として農業の中に法人経営を作っていく後押しをしています。理由は高梨さんが言ってくれたことに尽きます。農業は定価がないのが当たり前。怖いという発想や経営マインドがなかったように思います。このままだと世界や他の産地間の競争で戦っていけない。何より若い人が極端に少ない農業をやりたい人たちも現れなくなる。経営感覚を持った人材にもっと入ってきてもらいたい。

鈴木 僕も一緒です。農業には端境期があって、収入がなくなることをずっと疑問に思っていました。

小泉 この前行った岩手県の農家では、ブランドトマトを作っていて1瓶9千円のジュースにしているそうです。そういった売り方もできる。どこまで付加価値をつけられる物を作るかです。

山森 私も定価があるものをとの思いで、ニンジンジュースを年間約1500本作っています。多くの中の1つにならないよう、「三浦の山森が作ったジュースを飲みたい」と言われるよう、原材料のニンジンの品種や作り方を毎年工夫しています。

小泉 山森さんと高梨さんの話を聞くと6次産業化の成功例ですね。

下里 自分も加工品をやりたいと思っています。市場に出せない野菜やダイコンの葉など、今まで捨てていたものから現金化できたら。

TPP対策とは

小泉 基本的に皆さんのやっている品目にそこまで大きな影響はないと言えます。ただ、色々な間接的影響を不安視する声もあります。キャベツ・ダイコンなどの関税は3%でないに等しい。日本はキャベツ・ダイコンを中国からほとんど輸入しています。中国はTPPに入っていないので、その部分を見れば影響はほぼありません。しかし、地元のとある農家さんと話した時、例えば「これから米農家が米をやめたら、恐らく野菜に乗り出してくるだろう」と。すると競争が激しくなって、結果価格が下がってくる。その不安は確かにあるのかもしれない。ただ、いずれにしてもTPPは終わりじゃない。これから参加国は増えると思うし、地域全体を包含するような経済連携協定も話が出ています。今考えていることは、これからどんな状況になっても立っていける日本の農業を作らなきゃいけないということ。そのために今までの延長上に農業の未来があるのではなくて、発想の転換が必要。もうすでに頑張っている人たちはいっぱいいます。今まで日本の農政は農家=弱者だったんです。弱者=守らなければいけない。守るには補助金が必要。補助金は多くとらなきゃいけない。目的は農業の発展なのに、予算をいくらとれるかという方向になっているケースが多い。僕はそれを変えなきゃいけないと思う。ローカルじゃなくて”グローカル”。ローカルな魅力とグローバルな世界が広く深く繋がっているのが農業です。僕はTPPは日本の農業を破壊しないと思っていて、それをチャンスに変えられるよう全力を尽くさなきゃと思います。

永島 この前、シンガポールで日本のフランチャイズレストランを定着させようとしている現地の日本人と話をしたところ、日本の農作物の今のイメージはまだまだ放射能のイメージが払しょくしきれてないとのことでした。アメリカやオーストラリアなどでキノコを作り始めているところがあります。それならば今、未来を見据えて、シイタケの菌の種類や日本の良さ「メイド・イン・ジャパン」を出していって、最終的には現地で日本の技術を使って生産する「メイド・バイ・ジャパニーズ」を目標にしていけたら。チャレンジして、できるんだという事例を作っていきたいです。

小泉 この2つの他に、チェックド・バイ・ジャパニーズ(ジャパン)があります。日本の安全や安心に対する意識の高さです。これから日本の物を売っていくときに、日本で作られたというだけでなく、日本人が関わることにブランドを見出していく後押しもやっています。JGAP(食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証)やHACCP(食品の製造工程における品質管理システム)など、日本がチェックして認められているという価値が大事になってきます。ダーウィンの「必ず生き残るものは強いものではない、環境の変化に適応したものが生き残る」という言葉があるとおり、ずっと環境が変わらないことはない。その時々の環境に対応して生きていかなければ。厳しい言い方かもしれないけれど、世界は動いているし、ヒト・モノ・カネは繋がってきた。だからこそ変化に対応しうる足腰や体質強化に国は全面支援をする。「変わらないから大丈夫です」と僕は言いません。「変わるからやっていけるように頑張ろうよ」というのが僕の思いだけど、あまりそういう人はいないよね。

岩澤 始めた頃と今では環境が全然違います。こんなに儲かるとは思わなかった。人との繋がりで売り先が広がっています。

問われる営業力

山森 僕と高梨さんは「三浦半島食彩ネットワーク」というグループに入っています。

高梨 最初は県の補助金で三浦半島の農家や漁業を活性化させようと無料ツアーを組むなどしました。昨年は100人BBQというイベントで、マグロや三浦野菜の食べ放題を開催しました。

山森 観光も視野に入れた活動をしています。

小泉 観光はこれからの大きな産業で、首都圏から近い所にこれだけの産地がある。この機会に地元の新しい魅力に付加価値をつけるなど、新たな観光資源に農業をもっと活用すべきだと思います。

鈴木 僕たち「若耕人(わこうず)'s」は月1の勉強会や1つの畑を皆で耕しています。飲食店の方と一緒に種から収穫まで、種からお客さんの口までのストーリーを伝えたい。苦労や感動を消費者の方にも知っていただきたくて。また、これは個人の感想ですが、農業はこれから営業もしていかないと。生産だけじゃダメだと思っています。

小泉 それはとても大事。営業力の重要性、もっと根付かせたいです。しかし、個人の農家の営業力とだけでは限界がある。だから農協が大事なんです。農協や全農のような全国ネットワークの組織、他にはないですよ。後押しや変わった発想も持ってもらい、輸出に向けて世界展開の営業力をつけなきゃいけない。個人と組織の努力と両方で。

鈴木 結局、儲からないから跡継ぎだってできないんですよ。

高梨 昨年、新卒が入社しました。普通の会社として入社してくれたので、お給料を出してあげなきゃというプレッシャーがあります。サラリーマン並みには出してあげたいです。

小泉 「サラリーマン並みの農業」という言葉がありますが、それを実現しつつある社会がだんだんできてきたのでしょう。

10年後の将来像

岩澤 もっと自分の野菜を宣伝できる、売り込みできるような野菜をどんどん作りたいです。

鈴木 飲食店、スーパー・近所の八百屋に地場野菜がずらっと並んで、子どもでも「誰々さんのトマトだ」と分かるくらい、本物の地産地消を作りたいです。その延長線上に子どもが就きたい職業で農業がトップクラスにいれば最高ですよね。

山森 簡潔に、憧れの職業になるようにしていきたいです。

高梨 女子大生にアルバイトの1つとして選んでもらえるような直売所づくりをしていきたいです。

下里 ジャンルは何でもいいので、ごちゃまぜでコラボレーションして面白いことをしたいです。

永島 美味しいとか楽しいとか、農業は感動を生めると思っています。親しんでもらえる所を10年後、形にできたらいいなと考えています。

小泉 僕は人口減少対策が日本の最大の課題だと思っていて、農林部会長になり自分の中で人口減対策は農業の発展という答えを見出しました。地方が元気になるには稼げる雇用がなければいけないが、どうやって生むか。減るものは減ると割り切りも必要だと思う。ただ、希望は見出さなきゃいけない。横須賀・三浦が必要なのは、横浜・川崎・東京にない自然の魅力、農業や漁業です。僕はもっと頑張れる環境を作りたい。最大の課題の克服する1つの答えを地元で見出せるかどうかがこれからの10年・20年じゃないかなと思います。

競争でレベル向上

小泉 できたらいいなと思うのは、切磋琢磨するために「ダイコンチャンピオン」とか、地産地消のNO.1を決めるとか。農業で新しいもの生めたらいいよね。

高梨 それは面白いですね。

下里 競争している人たちはエネルギー量が違いますよね。

小泉 戦いたい人が戦う。やってみたら?2つのグループで。

岩澤 以前、農協で品評会ありましたけど、今、なくなっちゃいましたもんね。

小泉 正当性をつけるのに、これ農協にやらせなきゃだめだね。先に仕掛けるのが、「よこすか葉山農協」か「三浦農協」どちらでもいい。ちょっと掛け合ってみようよ。
 

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