まぐろの街・三浦三崎を代表する名産品のひとつ、まぐろ漬。その製造販売を行う「羽床総本店」(海外町)が今月5日、創業95年を迎えた。代々受け継がれる老舗の味を守りながら、時流や消費者ニーズをつぶさに汲み取り進化。「三浦の港町から魚食文化を伝えたい」との理念とともに、しなやかに歴史を歩んできた。
時流読み、商機つかむ
創業は1923(大正12)年。初代・羽床伊太郎氏が横浜市内で米酒店を開業したのち、三崎へ移転。戦後、水産加工業を営んだ2代目の手により、売上の約7割を占める看板商品、まぐろ味噌漬・粕漬が誕生した。現在、代表取締役を務めるのは、4代目の山本浩司さん(46)。商社勤務を経て、3年前に先代から事業を引き継ぎ、9店舗を経営する。
「素材を生かし、そのままでもうまい魚をよりうまくするのが我々の仕事」と山本さん。新鮮なシロカワカジキやメカジキ、最高級の味噌・粕を使用。魚が持つ本来の甘みを引き立たせるため、甘味料や保存料を使わないなど、昔ながらの製造方法にこだわる。
一方、保存食として誕生当時から強めに効かせていた塩分は徐々にカット。敬遠されやすい魚の調理も、湯せんや電子レンジで温めるだけで食べられる商品も取り扱い、保存・調理技術の飛躍的向上、高まる健康志向など昨今の食事情にあわせた商品改良も行っている。消費者の購買意欲は安価な肉に向いているならば、弱点を補完して強みに変えればいい。「昔は干物のように、三浦の家庭の冷蔵庫にはまぐろ漬けが当たり前にあったと聞く。もっと地元の人にも食べてもらえたら」
地元企業のプライド
近年では地元高校とも連携。県立海洋科学高校の実習船「湘南丸」で漁獲したカジキマグロ、同三浦初声高校で栽培した未利用トマトを材料にオリジナルカレーを考案した。大手百貨店「高島屋」限定のギフト商品として販売。「生産者あっての私たち。地元企業として若い生産者たちに何かしたい」と思いを語り、老舗が果たす役目なのだと頷いてみせた。
伝統と革新を両立させるモチベーションは、「地元でしっかり代をつなぐ意欲」。次の100年の節目に向け、第一線を走り続ける。
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