自他ともに認める海好きで、魚好き。三崎在住の山田和彦さん(58)は、観音崎自然博物館の学芸部長として、その魅力と自然の大切さを老若男女に伝えている。
幼少期の自然体験
母親の話では、物心つくころには貝の標本をねだり、収集に熱をあげる子どもだった。また、草むらでは虫を捕り、夏休みになると田舎の川に日がな一日浸っていたという。小学生のとき、生まれて初めてのぞいた海は横須賀・荒崎だった。好奇心を刺激した水中眼鏡の向こうの景色を、今もときどき思い出しては懐かしむ。
幼心に決めた将来の夢は、「水族館で働くこと」。大学では水産学を専攻し、キャンパスのあった岩手県陸前高田市で研究調査に明け暮れたという。今でも続く魚市場通いは、この頃からのライフワークだ。
「生きものに携わる仕事に就きたい」。大学卒業後、夢を叶えて京急油壺マリンパークへ就職。アシカの飼育係などを経験した。その後、当時、築地市場内にあった「おさかな普及センター資料館」に12年間勤務。“日本の台所”の名にふさわしく、世界中から集まるさまざまな魚を通して知見を広げ、食視点からの魅力も知った。
一時はサラリーマン生活を送ったが、日曜日は決まって海へと繰り出した。2015年には、観音崎自然博物館の学芸員となったことで再びこの道へ。現在は魚類・海洋生物の調査や展示、講演などを行う傍ら、亡き前館長の遺志を継いで、天然記念物「ミヤコタナゴ」の保全活動にも身骨を砕く。
加えて今、憂うのは、22世紀の博物館のあるべき姿。文献や図鑑などデジタル化が進むなかで、「資料の最後の砦」と危機感を募らせる。
◇ ◇ ◇
三浦市立小学校では近年、海洋教育を推進。地元の海を教室に、各校で磯観察の指導役も務める。
一見、豊かに見える三浦の海だが、現状は藻場が衰退・消滅する「磯焼け現象」と生態系の変化が深刻。海との接点を持たない子どもたちは、その事実を知る術がないという。「まずは、目を向けることが大事」と説き、磯観察はあくまできっかけづくりなのだと話した。
授業を締めくくる際、「みんなもこの海がどうなっていくのか見ていてほしい」と呼び掛け、次世代への願いを込めた。
楽しむ心、忘れず
なにをしているときが一番楽しいか――。その問いに間髪を入れず、「見たこともない生きものを見つけたとき」と笑みをこぼして即答。ギンポがあくびをしている様子や、「ハナデンシャ」と呼ばれるウミウシがヒトデを捕食する姿をじっと眺めてみたりと、楽しみは尽きないようだ。海でのエピソードを次々と語る目は、まるで少年のように輝いていた。
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