「三浦での暮らしはとても満足している」。今年3月、4人の子どもたちと東京都武蔵野市から初声町和田へ移住した石川良さん(44)・あかねさん(42)夫妻は、これまでの9カ月間を振り返る。
横浜市出身の良さんは、幼い頃に遠足や家族と釣りに訪れた三浦へ移住する夢を温め続け、10年ほど前から不動産情報サイトで物件を探し始めた。駅や病院、スーパーなどが自宅至近にあった東京暮らしは便利だったが、「いつか暮らすなら海、畑、自然がある三浦が良いと思っていた」。子どもが生まれて成長すると家が次第に手狭になり、いよいよかと本腰を入れたが、間取りや価格条件が合わないばかりか、とくにファミリー向けの物件情報の少なさが予想外の障壁になったという。
ちょうどその折、三浦市主催の移住検討者向けお試し居住「トライアルステイ」事業の募集を知り、2017年度に参加。都内にある勤務先との通勤シミュレーションを兼ねて1カ月滞在した。じつは当初、意欲的だったのは良さんだけで、三浦移住を露程も考えていなかったあかねさん。子どもたちと週末のたびにやって来ては、参加者同士の交流会や街歩きを通して魅力に触れ、今思い返すとこの体験が安心材料になったという。移住支援を行う「ミサキステイル」も、トライアルステイ参加者の日常生活のサポート役として協力。縁もゆかりもない地で始める新しい生活に「フェイスブックなどSNSの情報を含め、頼れる地元の人がいるということは心強い」と夫妻は声を揃える。
9歳・6歳・4歳・2歳、育ち盛りの4姉妹がにぎやかな一家に、近所の住民も何かと気に掛け、可愛がってくれている。「学校関係をはじめ、子どもが地域との接点を増やすきっかけになっている」。少し前には三戸浜に魅了された同じ年頃の子を持つ家族が町内に引っ越してきて、子育てや生活情報などを共有する。「仮に私たちが60〜70歳になったとき、同じようには広がらない。移住のタイミングは早ければ早いほど良いと思った」と良さんは話した。
何気ない景色が贅沢
コロナ禍ではあったが、新年度から次女が小学校入学を控えていたこともあって、今年3月に引っ越しを決行。ほどなくして緊急事態宣言が発令された。学校は長期の臨時休校になり、良さんも在宅勤務が増えたため、「結果的にステイホーム期間は新しい生活に徐々に慣れ、環境を整える時期になった」
草が伸び放題だった庭や畑を手入れして、野菜の苗などを植えたことも初めての経験。以前は家遊びが好きだった子どもたちも、今では自発的に庭へ出てミカンをもいで食べたり、虫に触れるようになったりと順応しながら日々逞しく成長しているという。「家からは富士山が見え、夜は星がきれい」とあかねさん。色、音、においなど五感で楽しむ日常生活は新鮮で、贅沢な時間を与えてくれている。昨夏は、海水浴場の開設中止などの影響で自粛した海遊びが、今年の楽しみのひとつだ。良さんは「不便さや手間を前向きにとらえて、楽しんだもの勝ち」と話した。
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