タウンレポート 「いなりっこ」保存と継承
子どもたちが面や衣装を付け、太鼓や笛の音に合わせて舞台で踊る三浦市指定重要無形民俗文化財「面神楽」の子ども版「いなりっこ」。このいなりっこ40回目の舞台発表会が10月14日(日)午後1時から市民ホールで開催される。3歳から高校1年の22人が舞台にあがる。子どもたちはまさに今、最後の稽古に汗を流し励んでいる。
親から子、つなぐ郷土芸能
「もう少し動作を正確に、ここは一回止まる」、「頭はこう、手はこっち」―。子どもに指示を飛ばすのは、演技を指導する三浦いなりっこ保存会(湊不二雄会長)のメンバー。彼らは子どもの動きから目を離さない。少しでも動きに違和感があると歩み寄り、手本を見せる。子どもたちの目は真剣だ。稽古は8月から週に2から3日、夜約2時間行なっている。
太鼓と笛の音に合わせ動作をチェックしながら踊りを繰り返す子どもたち。年長のころからいなりっこを踊っているという山崎祐成くん(小学5年)は「稽古は厳しい。でも上手に出来たときはうれしい。いつでも上手にできるように頑張りたい」と話す。中学2年の鳥井渚生君は「父の面神楽を見てやってみたいと思った。郷土芸能は残したい」と話し、目標は「面神楽を踊りたい」ときっぱり。また、中沢りんごさん(中学1年)と泉杏佳さん(中学3年)は「細かい動作が難しいけど、楽しい」と2人とも笑顔を見せた。
三浦市には、稲荷講が各地に存在している。いなりっことは稲荷講がなまった名称。昔、いなりっこは各町内で踊られていた。しかし、昭和35年頃から、廃れていき、昭和37年にはほとんど消えたという。だが、昭和46年に海南神社青年会が発足、そこでいなりっこ復活の声が上がり翌年踊りが復活した。今は三浦いなりっこ保存会が保存・継承を目的に活動している。保存会のメンバーは面神楽の踊り手でもある。子どもの頃はいなりっこを経験。郷土芸能は父から子へ、また、その子が親となり子へ受け継ぐ。3代に渡り受け継ぐ家庭も少なくない。指導者も2代目へと替わりつつある。郷土芸能は、確実に受け継がれているように見えるが、人口減少・流出の波は止められない。「多くの子どもたちを教えてきたが、三浦市を出ていってしまう子は圧倒的に多い。学んでも受け継ぐ人は限られている」と嘆く。それでも「戻ってくる人もいる。郷土芸能を継いでくれる人はここにいる」と、子どもたちに期待を寄せる。
|
|
|
|
|
|