一針一針を手で縫い進めていく「刺繍」。その歴史は古く、糸や毛と布・革を合わせることから派生した「ステッチ」に技巧が加わり、装飾へと多様に広がっていった。世界各国で独自の文化に取り入れられており、土地ごとに伝わるモチーフや色彩、技法など、アート作品としての側面も持っている。
横須賀美術館(横須賀市鴨居4の1)では、刺繍作品に光を当てた企画展が開催されている。「糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。」と題し、幅広い分野の作品約230点を通して、「濃密な」表現方法に触れられる。
中・東欧の民族衣装
ヨーロッパ東部の多様性に富む文化は刺繍の表現にもよく表れており、衣装の装飾などに多用されているのが特徴。ルーマニア中部のカロタセグ地方に伝わる伝統刺繍「イーラーショシュ」など30点のほか、伝統的に手工芸が盛んだったスロヴァキアで製作された華やかで技巧性に富む作品30点を紹介する。
刺繍による「壁掛け」を記億を語り継ぐために残している地方もある。1950年代以降、カナダの先住民族イヌイットの人々が製作した刺繍は、氷の家や犬ぞり、狩猟などかつての生活様式をモチーフにしたもの。そんな「資料作品」も鑑賞することができる。
素材と色、技巧の掛け合わせで生み出される、多様な表情。これを表現方法として取り入れている現代作家の作品のほか、ビーズやスパンコール、モールや羽根などを縫い留めたオートクチュールにも注目。時代や地域を超えた新たな刺繍の世界を間近に感じることができる。
会期は6月27日(日)まで。同館【電話】046・845・1211
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