「今からまぐろを解体するよ、大間の生本まぐろ」。11月9日の朝、事務所でパソコン仕事をしていると、三崎でしらす漁を営む君栄丸の宮川元彦さんから一報が入った。これは素人でも分かる貴重な体験と、急いで加工場に向かったところ、即席の解体台と化した軽トラックの荷台に横たわり、丸々と太った腹を天に見せるまぐろがあった。聞けば、重さ147キロ。駆けつけた鮮魚店・活々水産の大庭剛さんが慎重な手つきでさばき始めた。「大型のまぐろの解体は、専用包丁を使うんだけどね」。従来扱わない魚種のため、出刃包丁などを駆使して巨体と格闘。包丁が骨にコツコツと当たる音が響く。その様子はインスタグラムでもライブ配信され、「ここがトロの部分」などと説明しながら、切りたての柵を見せていた。
この日解体されたのは、「黒いダイヤ」とも称される本まぐろ(くろまぐろ)。青森県大間で水揚げされ、頬には“大間ブランド”を示すラベルが貼られていた。
三崎港も全国有数のまぐろ水揚港で知られるが、遠洋漁業の基地として発展。そのため扱われるまぐろのほぼすべてが冷凍され、「生の近海本まぐろ1匹が三崎にあること自体が稀有なのでは」と宮川さんは話す。
ではなぜ、そのようなまぐろが目の前にあるのか-。宮川さんの次男・樹さんは、三崎初のまぐろ漁師だ。父と同じ漁師の道を志し、下積みを経て3年前に26歳で独立。当初は金目鯛漁を主軸に操業していたが、現在はまぐろという大きな夢を追いかけている。
相棒の「第五君栄丸」で今年8月末に三崎を出港。年末頃まで操業を続けるなか、釣り上げた大物を競り落とし、家族のいる三崎へ送ったのだという。「自分は普段1匹1グラムもないシラス漁をしているけれど、息子は100キロを超えるまぐろ漁なんて笑っちゃうよね」と冗談めかしながらも、宮川さんは息子の成長に喜んだ。
「せっかくだからどうぞ」と切りたてを試食させてもらうと、ねっとり柔らかい肉質に上品な脂の甘み。おいしさへの感動と、「おいしい」と月並みな感想しか出ない語彙力に泣けてしまう。
その後、ライブ配信を見た料理人や地元客から購入連絡が入り、当日のうちに完売したという。
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