「藤沢市民オペラ」をひも解いた当連載。最終回は芸術監督・指揮の園田隆一郎さん(45)に、今回の公演にかける思いと、演目「ナブッコ」の魅力を聞く。出演者、スタッフ総勢170人余りを束ねるマエストロは、「誇るべき素晴らしい伝統、一生忘れられない公演にしたい」と語った。
2月上旬、市民会館大ホールで連日行われているリハーサル。園田さんの指示でプロソリストの声が会場に響き渡った。
公演3週間前、稽古の合間を縫っての取材。歴代公演を見守ってきた客席に触れるとつぶやいた。「ヨーロッパの古い歌劇場のような自然な『木』の響きがある。改修されてもこの響きは失われないでほしい」。ホールへの思い入れも強い。
「演出家、出演者、合唱団、オケ、スタッフ全員同じメンバーが奇跡的に集結できることに感動している。きっと私にとって一生忘れられない公演になる」。本来ならば2020年11月に上演されるはずだった「ナブッコ」。公演延期が決定した当時は絶望的な気持ちに。それでも、藤沢市みらい創造財団ら事務局がスケジュールを調整し、感染防止対策を講じながらリハーサルを続けた。
「ナブッコ」は、後にイタリアオペラの巨匠となるベルディが、20代の若さで愛する家族を失い、苦しみながら書いた作品。「情熱的で駆け抜ける勢いのある音楽が最大の魅力」という。合唱が活躍し、オケにも高度な技術が要求される作品でもある。「市合唱連盟、市民交響楽団の皆さんが昨夏からリハーサルを重ねて素晴らしい仕上がりになっている。全員で『イタリアの音』を目指す」
藤沢市民オペラは、現在3年1シーズン制。1年目に招へい公演、2年目に演奏会形式、そして3年目に集大成の市民オペラを上演している。園田さん自身は2期、コロナ禍の延期を含めると7年。オペラの魅力を若者にも広く伝えようと小中高生への学校訪問なども精力的に行ってきた。
長く携わってきたからこそ、今伝えたい思い。「県外に住む私から見ても、藤沢市をはじめ湘南の皆さんが誇るべき素晴らしい伝統だと思う」。そしてこう呼び掛けた。「オペラを一度も聴いたことがない方にこそ足を運んでいただき、マイクを通さない生の歌声、迫力あるオケの音がホール全体に響くのを体験してほしい」
2月26日、170人の思いを乗せ、いよいよ幕が上がる。
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