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藤沢 人物風土記

公開日:2022.03.25

藤沢市が認定する「藤沢マイスター」(造園師)に選ばれた
安藤 忠男さん
石川在住 74歳

木をこしらえ、人を育て

 ○…「木と話をするんだよ」。庭木と向き合い、慈しむように語り掛ける。《枯れてくれるなよ。手をかけてやるからな》。それが後の幹や枝ぶりに現れる。眉唾だと思われるかもしれない。「でも、そういうもんだ」。卓越した技能者を市が認定する「藤沢マイスター」に選ばれた。「マイスター人として恥のないようやっていきたい」と穏やかに話す。

 ○…この道、55年。74歳の今も日々、職人として現場に立つ。かつて別荘地として栄えた鵠沼では、広々した庭を抱える屋敷も少なくなく、職人総出で手入れに出かけることも珍しくなかった。時代が変わり、分譲化が進んだことで大きな仕事は減ったが、その分、小さな庭づくりを楽しむ世帯から声がかかることが増えた。多様化したニーズに応えるため、顧客と意思疎通を図りながら各家庭の庭に合った剪定をするよう、心を砕く。

 ○…藤沢造園組合では過去に組合長も務め、後進の育成に力を注いできた。庭木の剪定と人づくりは通底するというのが信条。「単に枝葉を落とすのではなく、ゆくゆく立派な姿になるよう”木をこしらえる”のが植木屋。人間も同じ」。代表を務める安藤植木には10数人の従業員を抱え、地方から勤めに来る10代もいる。厳しく指導することもあるが、一人前に育つよう親心があればこそだ。「でも最近の子は少し注意しただけで辞めてしまうことも。これも時代かな」と頭をかく。

 ○…休みも植木を育てる畑に足を運び、剪定作業に精を出す。「手塩にかけた分、愛着がある。育つのが楽しみでね」と目尻にしわを寄せる。木をこしらえ、人を育てる。造園師としての仕事は己の人生そのものだ。「自分も育ててもらって今がある。伝えられるものは伝えていきたい」

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