CYCLE BOY谷信雪さん(甘沼) 「魔女の宅急便」に作品 空飛ぶ自転車ほか4台
現在上映中の実写映画「魔女の宅急便」に登場する主人公の魔女「キキ」と少年が空を飛ぶ自転車ほか4台を、茅ヶ崎市甘沼に工房を構える谷信雪さん(CYCLE BOY代表)が制作した=写真。
知人を介して作品に携わることになった谷さんは、主にオリジナルやオーダーメイドで自転車を手掛けており、映画の仕事は初めて。しかも求められたのは映画のイメージを左右するほどの空飛ぶ自転車と聞き、職人魂が揺さぶられた。
去年5月から作業に着手し、試行錯誤の末4カ月かけ作品を仕上げた。「時代や国など特定できない作品の世界観が自分のモノづくりに通ずるものがあった」
谷さんは東京生まれの51歳。自転車店を経営する父の背中を見て育った。尊敬する父は「障がいをもつ人々が乗りやすいように」と無償で改良するなど社会貢献の意識が高く多忙を極めていた。しかし家計は決して裕福とは言えない状況だったため、谷さん自身は「自転車屋だけはやらない」と会社員に。念願のデザイナーとして電機メーカーで活躍するも、次第にやりたい事ができない不自由さに思い悩み、いつしかデザインする手が全く進まなくなってしまった。それから2年間の休職を経たが、意を決し家業である自転車店を継ぐことにした。
妥協なきモノづくりイメージ共有し具現化
父の他界も背中を押した。父から受け継いだ自転車店「CYCLE BOY」は毎日忙しく、年に4日ほど休むだけだった。幼い頃から組み立てはお手の物だったため、ほぼ独学で学び免許を取得した。しばらくすると既成品ではなくオリジナルを作りたいというデザイナー魂が再燃。「海の近くで暮らしたい」という夢を叶えるため埼玉から茅ヶ崎へ移住。当初市街地で店を構えるが、より静かな場所を求めて現在の場所に。牛舎を1カ月かけ改装した工房には、年代物のフレームやサドルなどのパーツが壁や天井などに所狭しと並ぶ。「60、70年代は素晴らしいものを作ろうという情熱があった。そこに一番惹かれます」
客の求めるイメージをライフスタイルや背景から感じ取り、希望通りに仕上げる―。谷さんは乗りやすさはもちろんパーツや全体のシルエットを考え、時にはチェーンの色までこだわることもある。「『まぁいいか』で一部でも妥協すると全体がぼやける」。そのこだわりが評判を呼び、中には10年来乗り続けている常連もいるという。
夢はサンフランシスコにカフェと自転車店を併設した店を出すこと。自身の自転車が現地の人たちに好評だったことがきっかけだ。「好きな事を続けていけたらいい。これしかできないし。融通が利かないんで」と笑顔で話した。
トークイベントも
谷さんの作品が見られるイベントが3月20日(木)から31日(月)まで「ギャラリー&ショップokeba」(香川7の10の7)で開催される。時間は午前11時から午後5時(土日祝日は6時、最終日は4時)まで。
また22日(土)には、今回映画に登場する自転車たちの写真を交え、制作秘話や谷さんのモノづくりに対する姿勢などが聞けるトークイベントが開催される。
申し込み、問い合わせは同ギャラリー【携帯電話】090・2249・6112へ。
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