今年の4月1日に、働き方改革関連法が適用開始された。企業の健康経営のカギとなるのが、産業医だ。茅ヶ崎市に拠点を置く産業医、中尾智さん(40・矢畑在住)に、これからの時代に求められる“働き方”について話を聞いた。
産業医とは、企業で社員の健康管理を行う医師のこと。国内では、企業外の病院勤務を兼ねる嘱託産業医が9割超を占める中、中尾さんは産業医のみを専門とする、全国でも数少ない専任産業医だ。コワーキングスペース・チガラボなどを拠点に、現在市内の企業など5社ほどの産業医として活動する。
産業医としての仕事内容は、健康診断の結果調査、ストレスチェックなどが基本。中尾さんの専任産業医としての強みは、それらに加え、企業自体の健康、つまり経営健全化のサポートだ。データ分析を得意とし、オリジナルの産業医向け電子カルテ「さんぽカルテ」の開発にも携わっている。
「簡単に言えば、私の仕事は『より良く働くために何ができるか』を考えること。働き方改革の課題の1つは、生産性の向上。ブラック企業は社員を“機械部品”、ホワイト企業は取り換えの利かない“人”として扱う。企業のベースとなる“人”が健康なことが生産性向上につながる」と説明する。
一方で中尾さんは「便宜上“健康”という言葉を使いますが、目指すのは“健全”“幸せ”に近い」と話す。「病気でないことが健康」と捉えられがちだが、WHOの指針では、身体、精神、社会性において問題がないことを健康と示す。「社員の個を踏まえ、柔軟に変化できる企業が求められている。これからの働き方のキーワードは“自分らしさ”。大切なのは、なんのために働くのか、目的意識を持つこと」
健康のために「歩け」
健康のためにすべきこととして指導するのは、「歩くこと」ときっぱり。「人間は歩く生き物。歩くことで脳も鍛えられる。20、30分の有酸素運動を週3、4回ほどこなすのがベスト」と語る。
「運動も含め、仕事と生活は直結している。ワークライフバランスではなく、ライフワークサイクル」と中尾さん。働き方改革でも、多様な働き方の実現が柱の1つ。自身も、市内の行きつけ店での一杯や、小学生の息子らとすごす時間を大切にしている。「茅ヶ崎は仕事と趣味のサイクルを自然体でできている人が多い気がしますね」
産業医は、1960年代に発生した重工業や鉱山などで働く人達の健康被害に対する「工場医」がはじまりだ。自身も八幡製鉄所で知られる福岡県で育ち「近所にあり、身近だった」と選んだのが産業医科大学だった。「産業医は、時代に求められ生まれた仕事。やっていて良かったと思えるのは、企業が変わる瞬間に立ち会えること。変曲点を作る存在でいたい」とまっすぐな瞳を向けた。
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