先生の遺影に涙の優勝報告 平塚江南高校剣道部
県立平塚江南高校剣道部が先月30日、東京大学剣道部の主催する高校招待試合に出場し、初優勝を飾った。しかし、この結果を最も待ち望んでいた同校剣道部顧問の山之腰正行教諭は病床にあり、その優勝杯を見ることなく息を引き取ったという。6日、部員らは涙ながらに遺影に報告を行った。
山之腰教諭は教士7段という腕前で、平塚江南高校に赴任してから8年間、剣道部顧問として指導してきた。もう一人の顧問、鈴木宰也教諭は「とにかく声が大きかった。まっすぐな人で指導は熱心。生徒と分かり合うまで、とことん話をしていた。生徒からの信頼は大きかった」と、その指導振りを回想する。
指導を受けていた剣道部の生徒は、「一人ひとりの個性に合わせて稽古をつけてくれた。病床からはメールでアドバイスをくれたこともあった。他校の生徒にもいい先生だと羨ましがられ、自慢の先生だった。先生から一本取ってやろうと稽古をしてきたが、先生には敵わなかった」と話す。
同校剣道部は、昨年6月のインターハイ県予選の男子団体戦でベスト16、女子団体戦でベスト32、今年4月の関東大会の男子団体戦でベスト32に入るなど、県立高校ながら大会で上位を狙う健闘を見せた。
一方、山之腰教諭と生徒達が目標に掲げていた、もう一つの大会があった。羽生晴男校長は「山之腰先生は、試合を自分で見に行きたいとおっしゃっていたと聞いている」と話す。
その大会は、東京大学剣道部が首都圏の進学校を招いて主催している招待試合。昭和50年に始まった試合で、今大会には28校が出場した。江南高校は一昨年から3度目の出場だった。生徒達は大学内の武道場で、病床にいる恩師に届けとばかりに竹刀を鳴らした。
迎えた準決勝。インターハイ出場校、浦和高校を僅差で跳ねつけて辛勝。決勝でも西武文理高校から見事勝利を収め、目標だった優勝カップを手にした。優勝の一報は山之腰教諭の耳にも入り、とても喜んでいる様子だったという。
入院先に学校関係者が優勝カップと生徒の寄せ書きを届けようとしていた日の前日、山之腰教諭は永眠。江南高校は通夜のあった6日、お別れ会を開いた。同部主将の木村宇宏さんは祭壇の前に立ち、弔辞の中で優勝を恩師に報告した。
「大会では、どうしても勝って先生に喜んでもらいたいという一心でした。不思議なくらい自信を持ってやれたのは、先生が見てくれている気がしたからです。念願の優勝カップをもらえました。少しは恩返しができたかなと思います」。優勝杯は、愛弟子に微笑みかける遺影の前に静かに置かれた。
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