タウンレポート あなたの「二十歳の原点」を問う 平塚市美術館で6月12日まで記念展
青春の煌めきを知る卓越した展覧会
日本を代表する画家たちの青春期の作品が、湘南平塚に結集している。黒田清輝、熊谷守一、青木繁、坂本繁二郎、安井曾太郎、梅原龍三郎、岸田劉生、中川一政、村山槐多、佐伯祐三……綺羅星のごとく傑作群が並ぶ。この展覧会は平塚市美術館の開館20周年記念として好評開催中だ。
時代に絶望した高野悦子は「旅に出よう」という詩を書いて人生を閉じている。その詩や日記を収めた『二十歳(にじゅっさい)の原点』は、学園紛争という時代を背景に全共闘世代の一女子大生の魂の記録としてベストセラーになった。その名を冠した『画家たちの二十歳(はたち)の原点』が今、平塚市美術館の開館20周年記念事業の一環として開催されている。
美術愛好家のみならず各方面の注目を浴びるこの記念展は、観る人に「生きること」の意味を問うてくる。そして未曾有の災害を経た私たちは、日本人の「謙譲の精神」をこれまで以上に強く感じ取っていることと思う。東京国立博物館をはじめとする全国の美術館から平塚に参集した作品群は、どれも各時代の画家らの青春期を代表する油彩画や版画である。保有する美術館にしてみれば、謂わば門外不出ともいえる傑作揃いだ。
被災地の岩手県立美術館、宮城県美術館、福島県立美術館からも、学芸員らは展覧会を成功させたいとの強い意志のもと4月29日の夜に作品を間に合わせた。この記念展の企画者である土方明司さん(同館館長代理)は「翌日の30日からフルバージョンでの展示ができました。全国の美術館の皆様の協力がなければ開けなかった企画展です」と経緯を語る。被災地の美術館からは、時が時だけに遠慮する土方さんらに対して「こういう時期だからこそ、ぜひ飾ってください」との嬉しい申し出があったという。その声を受け同館の学芸員らは東北3県に駆けつけ、謙譲の美徳に満ちた人々から傑作の提供を得るに至った。
『画家たちの二十歳の原点』は、明治・大正・昭和・平成の一世紀以上に亘るそれぞれの時代の画家、54名の作品を「二十歳」という括りで並べたもの。高野悦子と同様に自ら命を絶ち夭逝したもの、名を成し天寿を全うしたもの、画家らの人生はそれぞれに波乱万丈だった。しかし、未熟ながらも「生きる」ということに対して、真摯に向き合うことができる「二十歳」の季節は、おそらくは平等に訪れたことだろう。
今この時期、私たちは心に沁みいる作品に触れ、各人の二十歳の原点を想ってみたい。そこで得たものは貴方の生涯の宝物になるかも知れない。平塚市美術館はその可能性を示している。
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