明治からの歴史に幕 株式会社 稲元屋
平塚の文化伝える出版物
明治の創業以来100有余年、地域密着型の書店として親しまれてきた東海道沿いの「稲元屋」が、今年7月31日に閉店した。同店には大手書店にはない平塚の風土や歴史、自然を伝える書籍が数多く残っており、それを広く市民の手に渡るようにしていくという。
稲元屋の歴史は、上平塚の「今井さん」が移り住み居を構え始まった。そこに藤沢の呉服屋で修行を積んだ「政兵衛さん」が呉服屋を営む条件で養子入りし、呉服店「稲元屋」が誕生した。
以来、3代目までの社長は「政兵衛」の名を襲名している。「店名は恐らく、政兵衛さんがのれん分けをした呉服店の名前を使ったのでは」と3代目の妹、今井信子さんは話す。
「紙店」として書籍を扱い始めたのも初代の頃からだったという。その他、楽器やガラス等手広く商売を広げ、2代目の頃から教科書も取扱い始めた。社長は代々花火師の資格も持ち、湘南地域の花火大会や運動会、イベント等に花火を供給する役割も担っていた。
閉店のきっかけは4代目である先代社長、今井政信さんの心不全による急死。子を持たず跡継ぎがなかったため、信子さんの息子である稲元薬局の今井裕久社長に白羽の矢が立ったが、様々な事情を考慮し、裕久社長は100年余りの歴史に幕を下ろすことになった。
その際、残ったものが二つあった。一つは花火倉庫。裕久社長によると「県内ではうち以外に一つしかないのでは」というほど貴重で、閉店を伝え聞いて早々に横須賀や厚木の業者から「譲って欲しい」という話が舞い込んだそうだ。
もう一つが、政信さんが力を入れていたという稲元屋の出版物。平塚にまつわる数々の書籍だ。平塚の自然に息づく野の花を網羅した「ひらつか野の花 上下巻」、いつかどこかで聞いた懐かしい俗言が集録された「湘南平塚くらしの中の俗言」、平塚の民話昔話を編集した「続 平塚ものがたり」、平塚の風景を極めて忠実に描いた「平塚素描集」、「ひらつか七夕30年の歩み」、「わが市の写真帖 平塚50年の歩み(市制50周年記念誌)」など数千冊もの本を、「地域のために役立つなら先代も喜ぶのでは」と一部を市教育委員会に、残りを全て市観光協会に寄贈した。
観光協会ではこれらを広く市民の手に渡るよう考えており、平塚素描集は1冊500円、それ以外は1冊300円で販売する。駅前の新光商店街フリーマーケットで第2・4日曜日に出店する他、市内の様々なイベントでも出品を予定している。売上げは全て同協会の活動資金として地域観光振興のために役立てていく。
購入に関する問合せは同協会【電話】0463(20)5110
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