全日本柔道男子監督 井上康生さん 新春特別インタビュー 「東京五輪、今からワクワク」
2020年東京オリンピック開催決定の吉報に日本中が沸き、俄然盛り上がりを見せるスポーツ界。本紙では、日本のお家芸として世界に誇る柔道界で多くの偉業を成し遂げてきた、全日本柔道男子監督の井上康生さん(35)にインタビューを行った。柔道家としての思い、選手やファンから慕われる人柄、指導者となった今を伝える。
――柔道の道を選んだきっかけは。
警察官であり柔道家だった父の影響で、5歳から柔道を始めました。自分より体の大きな相手を得意の内股で投げた父の姿を見て、強さと技の美を感じました。競技性だけでなく心を磨くことができるのも、柔道の魅力だと思います。
――2000年のシドニーオリンピックで優勝した際のガッツポーズ、そして表彰台で母親の遺影を掲げたシーンは、多くの国民の感動を誘いました。
自分の夢を達成できた時の喜びは、言葉では言い表せないものでした。全日本のトップを走っているという、日本代表の重みを感じながら戦っていた部分もありましたから。前年に1番のサポーターだった母を亡くし、その年はどん底に突き落とされていましたが、優勝すると信じてくれていた母の思いが力となり、金メダルを取ることができました。
――競技生活の中で挫折を味わったことは。
もちろん、心が折れそうになったり、くじけそうになったりしたことは何度もあります。そんな時に支えとなったのは、自分が必ず世界のトップに立てるんだと信じたこと、そして目標を持ち続けたことです。
――「日本を背負う」というプレッシャーをどう乗り越えたのですか。
「受け止める」ということだったと思います。逃げずに戦っていくこと。それをしなければ試合に立てない、自分の力を発揮できないということは間違いありません。
理想の指導者像 追い求める
――全日本の監督として臨んだ昨年の世界柔道選手権大会では、試合前の選手たちに送った激励の言葉が話題になりました。
監督として心がけているのは、選手たちの気持ちを高めてあげることと、具体的な戦い方の2つだけです。試合前、不安になったり気持ちが高ぶったりしている時に何が必要か。やはり自分の経験の中で、「よしやろう」という気持ちにさせてくれる言葉がありがたかった。メディアは「魔法の言葉」と言いますが、自分にとっては当たり前の言葉なんです。
――指導者として目指すものは。
よく「理想の指導者像」について聞かれますが、どういうものが完成形なのか正直まだ分かりません。だからこそ勉強を怠らず、全力でやっていく。そう考えて毎日を過ごしています。
――名門として知られる母校の東海大学柔道部では副監督も務めています。
良いものは良い、悪いものは悪いとはっきり言うことを心掛けています。東海大から次々と世界に羽ばたく選手を育てていけたら嬉しいですね。
――大学周辺での生活が長く、第二の故郷のようなものでしょうか。
そうですね。東海大相模高校時代から大学で稽古をしてもらい、自分を育ててくれた土地です。大学にはお世話になった先生方がいるので身が引き締まります。今でも見るだけでビリッとしますよ(笑)。近隣の方たちもあたたかくサポートしてくれ、ホッとできますね。
――6年後の東京オリンピックを背負う子どもたちに、アドバイスをお願いします。
オリンピックはアマチュアスポーツ界最大のイベントとして、誰もが夢に見る大会です。子どもたちには、ぜひ目標に向かって全力で努力してもらいたいです。可能性はみんなにあるわけですし、日本で開催されるのですから、直接肌で感じ、大きな刺激をもらって欲しいですね。私も今から興奮を抑えきれません。
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