万年筆のシェア国内トップを誇る株式会社パイロットコーポレーション。同社で販売されている万年筆すべてが、実は「メード・イン・平塚」であることをご存じだろうか。市内西八幡にある同社平塚事業所では、企業を代表する商品である「蒔絵(まきえ)万年筆」の展示資料館を年内に開館予定だ。
1918年に日本橋で創業した同社。第二次大戦の空襲で大塚工場が被災したため、1948年に旧海軍火薬廠(しょう)跡地の一部の払い下げを受け、平塚市に生産拠点工場を移設した。以降、全ての万年筆を平塚工場で生産。ほぼ全ての工程を手作業で行うため地元の女性が多数雇用され、平塚工場の前の通りは「パイロット通り」という名称で親しまれるようになった。
現在もペン先加工や組み立ては全て手作業。1本80万円もする最高級蒔絵万年筆も、工場内の専属蒔絵師が一つ一つ丁寧に仕上げる。万年筆のほか、手作業の必要な筆記具やペンの加工技術を生かした工業用製品、指輪などの生産も行われている。
今回資料館として公開予定の建物は、旧海軍火薬廠時代の建築物で、当時は安定度試験場として使用されていた。社内では通称「レンガ棟」で知られ、赤レンガの外壁などは当時から大きな手は加えられていない。
5年前から平塚事業所敷地内の建物の建て替えが始まったことを受け、「レンガ棟は戦中の平塚の歴史を伝える文化遺産としても価値があり、地域に公開できないか」との案が上がり、今回資料館として改築、公開するに至ったという。
展示は蒔絵万年筆に特化し、人間国宝の手による最高級万年筆や過去資料の展示のほか、現在もレンガ棟が蒔絵師の作業場としても使用されていることから、蒔絵師の作業風景も見学できるようにする予定だという。現在準備中で、年内の一般公開を目指しているという。
同社では5年前ほどから万年筆の裾野を広げようと、女性や学生をターゲットにした製品の開発を進めている。昨年販売開始した小学生向けの安価万年筆「kakuno」のヒットを受け、通常2〜3万本だった月生産量を35万本へ体制を整えた。
人件費などを削るために生産拠点を国外に移す企業の傾向がある中、同社は「メード・イン・ジャパン」にこだわり続ける。「品質重視はもちろんのこと、筆記具を通じて日本文化を発信することが当社にとっての使命でもあります。当社が日本文化を発信する武器でもある万年筆だからこそ、手作業のメード・イン・平塚なんです」
平塚版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|
|
<PR>