平塚市を舞台に、抜群の推理力と「ライオン」に例えられる奔放さを持った女探偵エルザと、彼女の友人かつ「調教師」の美伽が活躍する推理小説、『平塚おんな探偵の事件簿シリーズ』(祥伝社)。前作『ライオンの棲む街』に続く第2巻『ライオンの歌が聞こえる』が6月に発売された。著者は、ドラマ化もされた『謎解きはディナーのあとで』(小学館)などで知られる、東川篤哉さん。全国で人気を博している同作について、東川さんに話を聞いた。
――既に多くの推理小説を生み出されている東川さん、同作のコンセプトを教えてください。
「女性2人組の探偵作品です。私立探偵を題材とする作品は、シャーロックホームズなど男性2人組、もしくは男女ペアが多いんです。僕のデビュー作(『鳥賊川シリーズ』)も男性2人組で、今回はその反対の作品です」
――平塚を舞台にした理由は。
「デビュー作を除き、八王子など、実在する街を舞台にして作品を書いています。自分の知っている街が少なくなってきた中で、担当編集者の出身地である平塚を舞台にしようということになりました」
――第2巻出版に際し、今の気持ちは。
「やっとの発売、でしょうか。この業界では遅筆で、1話に1カ月ほど要すんです。雑誌に連載したものをまとめ、1年半をかけての完成にほっとしています」
――話の組み立て方はどうされているのですか。
「まず核となるトリックのアイデアを考え、膨らませてストーリーにするのですが、このアイデア出しが大変。トリックは聞いたり見たりした面白い話などを書き記したネタノートというものを作っていて、それを参考にしています。平塚については取材や編集者の話を元にしています」
――今回も相模川、湘南平など、平塚市民馴染みの場所が多く出てきました。
「相模川は、以前から扱ってみたいトリックがあって、そこから逆算して出しました。湘南平も、平塚らしい場所なので、前作から使いたいと思っていたんです。やっと生まれましたね」
――お気に入りの場面などはありますか。
「2話の競輪場です。他地域の競輪場での取材なども参考にしたのですが、2人の会話のテンポ・掛け合いなど、『らしく』書けたかなと思っています」
――自身でも予想外だった展開などはありますか。
「今回は、エルザたちの情報提供者でありライバルでもある宮前刑事が、かなり協力的になっちゃいました。悪役とまではいかないですが、対立させる場面も作りたかったですね」
――今タイトルの由来は。
「実はなんとなく、です。先に表紙のイラストが出来上がって、それを見て、爽やかなタイトルにしたいな、と。あ、結局表紙に出ているエルザの乗っているバイクは話に出てきませんでしたね(笑)」
――表紙は平塚の海岸ですね。ウッドデッキと観測塔が描かれています。
「平塚は、海がある所が特に好きですね。自分も海辺の街で育っているので。本当は平塚の海を舞台にした話は、夏の時期を書いた前作で出したかったのですが、なかなか良いアイデアが浮かばなくて。本当は海で泳ぐエピソードが理想なのですが、今回は秋冬なので。次に夏の話を書く時には入れてみたいですね」
――今後、市内で新たに書きたい場所はありますか。
「平塚といったらベルマーレでしょうか。でも、ミステリーなので、どうしても殺人など事件が絡んでしまいますから(クラブのイメージに配慮すると)そう簡単にはいかないですかね」
――他作品のように、映像など他メディアへの展開などはあるのでしょうか
「まだないです。なにせ、エルザのイメージに合った女優さんが思い当たらなくて。ライオンですから」
――最後に市民、読者へメッセージをお願いします。
「ティーンエイジャーを含め、普段小説を読んでいない若い方から、推理小説好きの方まで、誰にでも読んでほしいと思っています。1話完結の短編構成なので、前作を読んでいない方にも、もちろん前作を読んで頂ければよりいっそう、楽しんでもらえるかな、と思います。ぜひ手に取って頂ければ嬉しいです」
――ありがとうございました。
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