包み隠さずすべての質問に応えた水嶋さん
新型コロナウイルスの感染拡大は「第３波」を迎え、平塚市内の感染者数も増加傾向にあり、見えない敵に対する恐怖が市民に重くのしかかる。新型コロナの正体とは。恐怖の正体とは何か。
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「味がしない」
万田在住の水嶋祥貴（あき）さん（44）は、昨年７月８日の昼食である異変に気が付いた。「味がしない」。コロナ罹患の症状として味覚障害があることを報道で知っていたため、県の電話相談センターに連絡。翌日、かかりつけ医や保健所の指示をもらい、ＰＣＲと抗原検査を市内医療機関で受けた。30分後に結果が判明し、「陽性です」と告げられた。
14日間の入院
熱もなく、気だるさもない。飲み歩くタイプでもなければ、昨年電車を利用したのは１月が最後。市外に出向いてもいない。「味覚がないだけで健康そのもの。心当たりは全くありませんでした」。ほどなく、保健所から着信があり、症状やここ数日間の接触者など、詳細な聞き取りが続いていった。
場所は共済病院の駐車場。社用車の中で一人、保健所からの再度の連絡を待つ時間は長く感じた。静寂の車内に着信音が響いた。検査の陽性判定からおよそ２時間、東海大学大磯病院への入院が告げられた。
現在は使用されていない小児病棟が「新型コロナウイルス感染症専用病棟」として設えられ、防護服に身を包んだ医師に出迎えられた。「テレビで見たことのある宇宙飛行士のようなあの格好」。病棟には厳重なロックがかけられ、４人部屋に一人通された。
水嶋さんは、ここで14日間を過ごした。１日に５回ほどの検温・血圧測定にくわえ、採血やレントゲンは必要に応じて行われた。ＰＣＲ検査は計７回。心電図は24時間計測された。入院５日目には味覚が元に戻り、７回目のＰＣＲ検査で陰性となった。
水嶋さんは医師に感謝している。「防護服を一度身にまとうと、なかなか脱ぐことができない。初夏の病棟で水分補給も額の汗を拭うこともできない医師たちは、顔色ひとつ変えず親身に接してくれました。なかにはコロナ病棟へ志願して来た若い医師もいた。感謝しかないですね」。
悪意なき偏見
明石町で印章店を営む水嶋さんは７月27日に店を再開した。ささやかな日常が戻ったように思えたが、待っていたのは噂や偏見の数々だった。
「もう店を再開して果たして良いのか」「祥貴が近所のコンビニにいたぞ。大丈夫なのか」「お前も祥貴の濃厚接触者だ。検査を受けろ」。すべて人づてに伝わってきた。心が折れかけた。
「コロナにかかったことをなぜ教えてくれなかったのか」という匿名のクレーム電話や、ＳＮＳによる誹謗中傷もあった。まるで犯罪者扱いだった。「すべて悪意のない偏見なのだと思います。仕方ないこと。でもつらかったですね」。
皆は陰性
幸い、家族を含め、保健所が認定したおよそ15人の濃厚接触者は、その後のＰＣＲ検査で全員が陰性と分かった。正体の分からないウイルスを前に、メディアやＳＮＳで垂れ流され続ける情報に踊らされ、錯綜する根拠なき噂や誹謗中傷。「コロナは社会が抱える課題を浮き彫りにしたと思います」。
思いやり持って
今思えば、気持ちの緩みはあった。水嶋さんは「感染前は屋外ではマスクを外していた」と振り返る。しかし、今は免疫の有無を確認する抗体検査は受けず、マスク着用や手指の消毒、換気など感染症予防対策を徹底している。
「でも、感染症対策の程度や方法などは、あくまで一人ひとりが考えてするものです。経済との両立を見据えたＧｏ ｔｏキャンペーンなども各自が判断して利用するもの。群衆心理が個人を攻撃してはいけません。一人ひとりが他者に対する思いやりをもって行動することが大切なのではないでしょうか」。
【平塚編集室より】
今回、水嶋祥貴さんは「自分の経験を話すことで読者の方々にコロナを『正しく』恐れてもらいたい」と、実名で取材に応じてくださいました。なお、取材はマスク着用、手指の消毒など感染症予防対策を徹底した中行われ、撮影時のみマスクを外しました。
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