優れた強度と軽量設計水に浮き水害対策にも
津波や家屋の倒壊などで多くの犠牲者を出した東日本大震災。「災害から、一人でも多くの命を救いたい」と、市内宝町のコスモパワー(株)(田中昭次社長)が、防災シェルター「ノア」の販売を開始した。球体のユニークな外観と性能の高さが反響を呼び、今や海を越えて世界各国のメディアが熱視線を送っている。
ノアは大人4人が入れる球体シェルター。素材は強化プラスチック(FRP)で、70キロという軽量設計だ。直径1・2メートルとコンパクトで、室内や庭先にも設置することができる。サイズは4人用に加え、直径1・5メートルの6人用も生産中という。
球体にしたことで強度も確保した。実験では、2メートルの高さから100キロの鉄柱を投下しても貫通せず、12・5トンの荷重を加える圧縮実験にも耐え抜いた。
大磯漁港で行った海面投下実験では球体の3分の2が海面に浮き、浸水もなく水害に適応することが証明された。底に水を入れれば水面でも安定した重心を保つことができるという。
FRPは電波を通すため、携帯電話の使用も可能だ。鮮やかな黄色い外観は、居場所を知らせる目印にもなる。
シェルターの開発は、数年前、相次ぐゲリラ豪雨の被害を知った田中社長が思い立った。
製品化には至らなかったが、3月11日の東日本大震災以降、ホームページで公開していたアイデアに興味を持ったテレビ局が、製品化を打診。約1カ月後には試作機の完成にこぎつけた。
9月上旬に販売を開始すると、メディアがこぞって取り上げたこともあり、現在までに700件近い問合せがあった。ノアの販売に携わる同社の市川直樹さんは「今の生産能力では1日に3つが限界。量産体制が整うまでは、納期に2カ月ほどかかる」と反響の大きさに驚く。
奇抜なシェルターの存在は、海外の主要メディアも報じるほど高い関心が寄せられている。
海外からの問合せが増えたことで、社員は翻訳ソフトを使って対応にあたるなど忙しいが、「今後は津波対策を進める自治体へもPRできれば」(市川さん)と販促にも力が入る。
今年12月、東日本大震災で被災した作家や伝統工芸産業を支援しようと、ニューヨークの美術館「ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザイン」で行われるチャリティーオークションでは、ロビーにノアが展示されることも決まっている。
「シェルターというと、重い、大きい、高いというイメージを持たれるが、ノアはその全てを否定した製品」と田中社長。「あの震災時にノアがあったら、どれだけの人の命が救えたか」と、”ノアの箱舟”が担う役割に期待している。
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