一糸乱れぬ演技で観客を魅了し、「水中の華」とも称されるシンクロナイズドスイミング。その名称が、今年4月から「アーティスティックスイミング」に変更された。同調を意味するシンクロからアートへと、競技の本質にふさわしい名に生まれ変わった。そんな高い芸術性を誇る競技を支える人が平塚市にいる。選手の衣装を手作りしている花水台在住の石井直子さん(35)だ。
アーティスティックスイミングは、芸術性や技の完成度を争う競技部門と、演技力で観衆を魅了するショー部門の大きく2つに分かれる。いずれも競泳とは異なり、演技を効果的に魅せるため色彩豊かな衣装が用いられる。
伸縮性に優れた素材をベースに、スパンコールやクリスタルラインストーンといったきらびやかな光沢は作り手のセンスも光らせる。石井さんは、これまで200着以上を選手や演者に提供。仕事としてだけでなく、関わりのあるスクールの発表会用に無償で提供するなど、ウォータースポーツの振興にも取り組んできた。
3歳から競泳を始めたという石井さん。崇善小学校に進み、5年生になると各地のYMCAに所属する選手が出場する全国大会で入賞するなど活躍した。しかし、その後は記録が伸び悩みシンクロに転向、これが転機となった。
所属した大磯アーティスティックシンクロで指導を仰いだのが、ソウル五輪銅メダリスト小谷実可子さん。石井さんは「シンクロで五輪へ」と本気で考えていたが、小谷さんの指導方針は「勝ち負けでなく楽しむ」ことだった。思惑の違いから衝突もあったが「仲間の大切さ、あきらめない心を教えてくれたのはシンクロでした」と今は感謝の心で振り返る。
高校を一区切りに現役を退き、卒業後は水着のデザイナーを志し服飾の専門学校に進んだ。それから間もなく小谷さんから衣装のオーダーを受けた。以来、ジュニア五輪予選で使用する水着など依頼は多岐にわたり、「演技が最大限引き立つように」と一着一着に魂を込めてきた。
「恩師」の小谷さんとは25年来の付き合い。石井さんは衣装作りのかたわら、小谷さんが主宰するスクールで指導にもあたっている。二児の母となった今、「現役には戻れませんが、今もシンクロが大好き。これからも関わっていきたいですね」と笑顔の”華”を咲かせて語った。
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