当時の様子を話す片倉さん
｢むしろ｣持参し日枝神社で授業
１９４５年７月16日夜から17日未明にかけ市内を襲った「平塚空襲」から今年で75年。当時空襲を体験した人に話を聞いた。
御殿在住の片倉敬之助さん（84）は、大野町立第二国民学校（現・中原小学校）の４年生時に平塚空襲を体験した。
戦中、現在の大野中学校の位置に海軍第六工場があった。空襲当時、上の姉2人は勤労奉仕のため寮に入っており、照明弾が落ちた時点で、消防団に入っていた父を残し、母と末の姉と共に渋田川にかかる大縄橋まで逃げた。
土手に避難してきた人から「中原小が燃えている」と聞き、「学校に行かなくて済むと手を叩いて喜んだ」と片倉さん。自宅が燃えているのを見た時にやっと何が起きているのかわかった。
母屋も物置も焼失した後は、敷地内の竹やぶを切り出し筏のように組んで、その上で10日ほど過ごした。生い茂る竹が屋根代わり。「背中がゴロゴロして痛かった」と苦笑する。小学校が焼けたため、日枝神社境内の青空教室はむしろ持参だった。「家が焼けたことでそれすら用意できず、いじわるされたこともある。みんな余裕がなかった」
農業を営んでいたため空腹だった記憶はない。戦後、横浜から買い出し人が訪れると闇売買とみなされ、父はしょっちゅう警察署に連れていかれたという。ごまかすために子供に対応させることもしばしばで「『パンを持ってきてくれたらサツマイモをやる』とねだっていた。当時はパンに夢中だった」とほんのり甘い味を今でも思い出す。
片倉さんは「親は苦労続きだったと思う」とぽつり。「いつ空襲が来るかもわからず、何かに集中するということができない。空襲からまちを立て直すのにも駆り出された。小学校も中学校も、勉強した記憶なんてないですよ」と少年時代を振り返った。
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