南矢名東光寺 薬師堂、仁王門が老朽化 建築様式は江戸中後期
天台宗医王山東光寺(南矢名366/樋口亮順住職)に江戸時代に建てられた薬師堂と仁王門がある。その2つの老朽化が進み、地震などで倒壊の危険もあるため、現在、改修に向けての委員会が設けられ、2日に檀家の代表者約20人に向けて中間報告を行った。
薬師堂は、建築様式から見て17世紀に建立されたもの。五間堂と呼ばれる御堂で、正面から見ると柱が6本あり、柱と柱の間を「一間」と数えることからその名で呼ばれる。また、薬師堂の入り口にそびえたつ仁王門(2階建ての楼門)は18世紀後半に建てられたもの。薬師堂は約400年、仁王門は約240年の歴史を持つ建造物だ。
市内に五間堂があるのは同寺だけで、五間堂自体、各市に1つあるかないかというほどの御堂。仁王門も市内では珍しく、さらに、五間堂と仁王門が揃ってあるのは、県内でも数えるほどしかないという。
同寺から依頼を受け視察した東京工芸大学名誉教授工学博士(建築専門)の清水擴(ひろし)氏は「五間堂と仁王門が一緒にあるというのは、寺の格式が高いことを表している」と話した。
同寺の開山は古く、奈良時代まで遡る。薬師堂は平安時代末期に再興されたが、その後焼失。鎌倉時代初期に再建されたが戦国時代に再度焼失した。
歴史書物は本堂にあったが、1950年の火事により焼失。同寺の謂れを書いた巻物は持って逃げたが、過去を知るための資料はほとんど残っていない。しかし、現在は本堂にある木造聖観音菩薩立像は平安後期の特色があり、江戸時代に編纂された「新編相模国風土記稿」に同寺のことが記載されていることなどから、歴史は古いと推定される。
同寺にある木造薬師如来立像(推定製作時期/室町期)と、木造聖観音菩薩立像(同/平安後期)は、1965年に市の指定文化財になっている。
保全を検討中
文化財としての価値の保全と耐震性向上のため、昨年4月、同寺と檀家で構成する東光寺薬師堂改修検討委員会が設置された。昨年の東日本大震災を一つの契機とし、今年、薬師堂と仁王門の耐震性について専門業者に委託し耐震性診断を行った。薬師堂、仁王門それぞれ個別に診断を行い、「震度5強の地震が発生すれば、倒壊する危険性が高い」という診断結果だった。
9月2日に行われた同委員会の中間報告では、薬師堂は「人が入って修行する場でもあるため、高い耐震性が必要。歴史的な価値はなくなるが新築するのが良いのでは」とし、仁王門は「地域のシンボルでもあるため、現在の形を残しつつ、改築して耐震性を向上させたい」との委員会からの報告があった。現段階の新改築費用は合わせて1億円を超える見通しだという。
今回の中間報告では檀家代表者から明確な意見は出なかったが、来年4月に行われる総会で新改築の最終的な方向性を示す予定。
樋口亮順住職は「基本的には委員会の意見に賛成。補修では100年先までの安心はない。歴史的な価値は失われてしまうかもしれないが、長い目で見れば今この時期に新改築するのは致し方ない」と話した。
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