2021年の年頭にあたり本紙では、高橋昌和秦野市長に恒例の新春インタビューを行った。新型コロナに翻弄された激動の2020年を振り返るとともに、1期目の最終年となる今年の展望や主要施策、ポストコロナを見据えた今後の取り組みを聞いた。(聞き手/本紙・秦野編集室編集長 須藤一成)
--2020年を振り返っての感想をお願いします。
昨年を振り返りますと、何より、新型感染症対策に追われた一年だったと思います。
そのような中で、小惑星探査機「はやぶさ2」が2014年(平成26年)打上げ以来、6年もの歳月をかけ、50億キロメートルの旅を終えて、見事な偉業を達成したことは、新型感染症の影響により大変な状況にある私たちにとって、久々に明るいニュースとなりました。
これまで医療体制の支援や水道料金の減額、プレミアム商品券の発行等の消費喚起策など、健康と医療、日々の暮らし、地域経済を守るという3本柱での対策を実施し、国難ともいえる未曾有の危機を乗り越えるため、全力を尽くしてきました。
今なお、感染症の流行は続いていますが、医療・介護従事者の皆様をはじめ、様々な立場の市民や事業者の皆様のご協力に支えられたと心から感謝しています。
このような中にあっても、2030年度を見据えた新総合計画の策定に取組み、基本構想を策定することができました。43年ぶりに改定した都市像は、市民の皆様を始めとした多くの方々からご意見・ご提案をいただき、「水とみどりに育まれ誰もが輝く暮らしよい都市(まち)」としました。
これは、市民共有の財産である「水とみどり」と共生し、その恵みを享受しながら、SDGsの理念も踏まえ、市民一人ひとりに焦点を当て、誰もが活躍し、まちの活力が維持できるよう願いを込めています。
また、中学校給食の完全実施に向けた取組みを着実に進めたほか、表丹沢魅力づくり構想の策定により、本物の魅力づくりに向けた基礎固めに取組むなど、未来への飛躍につなげることができたと考えています。
--これまでの3年間の総括をお願いします。
市長就任以来、優先的に取り組んできた「5つの誓い」の重要施策は、私自身が市民から直接いただいた市政への多くの期待や要望の中から、秦野の未来を見据えて選択したものです。この3年間、その実現を目指し、一つずつ着実にその歩みを進めることができたと考えています。
「地域医療の充実・強化」では、市民が安心できる地域医療体制を構築するため、妊娠、出産、子育て、成人期の各ステージに応じた取組みを進めてきました。日帰り型産後ケア事業の開始や小児医療費の通院助成を中学3年生まで拡大したほか、救急体制の充実を図るため、秦野赤十字病院との共同で東海大学の協力も得ながら派遣型救急ワークステーションの運用を開始しました。
また、秦野赤十字病院の分娩業務の再開は、切れ目のない子育て支援策の一丁目一番地であり、これまで大学医局との顔の見える関係を築いてきました。これを足掛かりに、引き続き医師確保に取り組んでいきます。
「中学校給食の完全実施」では、提供方式を保護者や学校の意見も踏まえた「センター方式」(共同調理場方式)とし、民間活力を最大限に生かした公民連携方式とすることで、工期の短縮と財政負担を抑えることができました。
現在、「学校給食センター(仮称)」の建設と、各中学校へ給食コンテナ配送用エレベーターの設置に着手しており、本年12月の開始に向けて、着々と準備を進めています。
新たな都市像の実現へ向けて
「教育水準の改善・向上」では、教職員の「多忙化対策」を優先して取り組みました。「本来業務」に専念できるような環境を整備することが、児童・生徒の学力向上につながるものと考えたからです。そのため、学校運営を補助するためのスクールサポートスタッフを全ての中学校区に配置するといった取組みを、市独自の支援策として、県内に先駆けて行ってきました。また、児童や生徒の情報活用能力を育む教育環境と、今回のコロナ禍のような緊急時でも、ICTの活用により全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現する必要がありました。そこで、今年度中に、児童・生徒へ1人1台のタブレット型パソコンの配置と、小中学校の高速通信ネットワーク環境を整備するなど、GIGAスクール構想の実現に向けた準備を、当初の予定より3年前倒しして進めてきました。
「小田急4駅周辺のにぎわい創造」に向けては、4駅それぞれが持つ特徴を活かすことが重要であり、国登録有形文化財となった本町周辺の近代建築物や曽屋水道記念公園を活用するなど、楽しい「まち歩き」の仕掛けづくりを進めてきました。
また、弘法山や震生湖、はだの歴史博物館など、駅と駅の間に点在している自然や歴史、文化などの地域資源を線でつなぐことで、新たな人の流れを生み、地域経済の好循環につながる取組みを進めてきました。
「新東名・246バイパスの最大活用」では、戸川地区において、地元とも共存できる企業誘致などを可能とする土地区画整理事業となるよう、その準備組合への技術支援を行うとともに、秦野SA(仮称)周辺の道路整備を進めています。
また、ボルダリング施設である「はだの丹沢クライミングパーク」を昨年6月にオープンし、隣接する県の山岳スポーツセンターのリードとスピードの施設と合わせ、スポーツクライミングの複合3種が体験できる国内有数の拠点を整備しました。さらに、「表丹沢魅力づくり構想」を策定し、表丹沢に点在する様々な魅力ある資源を結びつけ、たくさんの人に来てもらうことに加え、市民が愛着と誇りを持てるふるさとの実現に向けた第一歩としました。現在、認定を受けた森林セラピー基地を活かした取組みや、登山や自転車愛好家の活動拠点となるヤビツ峠レストハウスの整備などを進めています。
--任期最後の1年となる2021年の展望や目玉施策についてお聞かせください。
いわゆるポストコロナを見据えた中で、市民の命と暮らしを最優先に考え、新たな日常に向けたデジタル化の推進や地域経済の活性化に加え、地球温暖化に伴う気候の激変化に対応した災害に強いまちづくりを進めていきます。
そして、今年の12月からは、「安全・安心で生徒が喜ぶ中学校給食」が、いよいよスタートします。成長期の子どもにふさわしい献立づくりや、農業者や商業者と連携した地産地消による食育に取り組んでいきます。
また、本市発展に大きな期待が寄せられる新東名高速道路が、新年度内には秦野インターチェンジ(仮称)まで開通し、本市の交通アクセスは格段に向上します。「丹沢」「名水」「桜」「温泉」といった本市の強みを最大限に生かし、表丹沢の魅力づくりと小田急4駅周辺のにぎわい創造といった取組みを着実に推進し、関係人口の創出や、定住人口の増加につなげていきたいと考えています。
--最後に読者へのメッセージをお願いします。
市民の皆様には、新型感染症拡大防止に向けた取組みに、御理解と御協力を賜り、心から感謝申し上げます。東京五輪の開催や新東名高速道路の開通を間近に控え、本年は、秦野が大きく飛躍するために大変重要な一年となります。
新たな都市像である「水とみどりに育まれ誰もが輝く暮らしよい都市(まち)」の実現に向けて、市民の皆様との協働・連携のもと、4月からスタートする新総合計画を着実に進めていきます。
一日も早く感染症が収束し、新しい年が皆様方にとりまして、健康で明るい幸せな年になりますことを心からお祈り申し上げます。
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