正月特別編 三浦の散歩道 みうら観光ボランティアガイド協会
お正月は「おとそ」で乾杯!
新しい年を迎える前夜を「除夜」と言います。『日本歳時記』に、「一年終わる夜なれば、つつしみて心をしずかにし、礼服を著(ちゃく)、酒食を先祖の霊前にそなへ、みづからも酒食を食し、家人奴婢にもあたへ、一(ひと)とせを事なく経(へ)ぬることを互に歓娯し、坐して以(もっ)て旦(あさ)をまち、旧を送り新を迎ふべし」と記されています。
また、別の書『和漢運気指南』では、「除夜を立春に入る日の前夜」として、次のようにあります。
「此ノ夜ハ冬ノ陰気去リテ春ノ陽気来ル界ナル故(ゆえ)ニ、一年ノ節気(註、立春に始まり大寒に終わる二十四節気のこと。」)終り、次年ノ節気始マル故(ゆえ)節分ト号セリ陰気ヲ鬼トシ陽気ヲ福トシテ、鬼ヲ退ケ福神ヲ迎フルノ義ナリ。」として、「儺(オニヤラヒ)ト云フ是(これ)ナリ。」として、「鬼は外、福は内」のことばをかける「節分」を「除夜」としています。
除夜が明け、新年を迎えるとき、飲み交わすのが「おとそ」です。漢字では「屠蘇」と記します。
『日本歳時記』に、「むかし人ありて草庵の内に居る、毎歳(まいとし)除夕(大晦日の夜)に村の入口に薬を一貼(ちょう)おくり、袋に入れて井中に浸(した)さしめ、元日に水より取り上げて酒樽に入れ、名付けて「屠蘇酒」と号す。これを飲めば急性の伝染病にかからないとあり、屠は「ほふる」とよみ、蘇は「よみがへる」と訓ず。此ノ薬よく邪気を屠(と)絶(だ)えて、人魂を蘇醒(そせい)せしむる故に「屠蘇(とそ)」と名付けたと言われています。
さらに、『年中故事要言』
でも、「元日屠蘇酒ヲ飲ムベシ、是レヲ飲メバ一家ニ病ナシ、一家ニ是レヲ飲メバ里ニ病ナシト云フ、目出度キ功能侍(はべ)ルモノナリ。」として、大晦日の夜に、薬一包を井の中に浸して、元日に取上げて酒樽に入れるのを「屠蘇酒」としています。
では、いつ頃から「屠蘇」の風習が始まったのでしょうか。『古今要覧』によりますと、次のように書かれています。
「これを正月元旦に用ひ給ひしハ、五十二代嵯峨天皇の弘仁年中(810年〜24年)を始とす、(中略)十二月晦日の午(うま)の時(12時)に豊楽院の西、典薬寮(てんやくりょう)の巽(たつみ)(南東)の方の御井に漬(ひた)し、それを元日の寅(とら)の刻(午前四時)にとり出して、御酒をあたためて御銚子に入れ、屠蘇をひたして、まづ薬子(くすりこ)(天皇に供する屠蘇の毒味をする童女)のわらは御試して後に、天皇に奉れる。(後略)」とあります。また、さらに「今に至りても、万民おのおの年のはじめにこの酒を調(ちょう)して、家ごとに祝しめるは、嵯峨天皇の大なる御たまものにて、あふぐべくたふとむ(仰ぐべく尊む)べし」とも記されています。
皆様、元旦の朝には、ゆっくりと「屠蘇酒」を味わいましょう。
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