馬との交流で自分見つめ直す 湘南国際村で「動物介在教育」
今年の干支、午(馬)―。颯爽と力強く駆ける姿も印象的だが、大きな体とは対照的に、繊細で優しい一面も持つ。葉山町と横須賀市にまたがる湘南国際村では、馬との交流を通し心と身体のバランスを整える、全国でも珍しい取り組みが行われている。
取り組んでいるのは地元の団体「湘南国際村ランドスケープ集団」。馬は人の緊張や不安を察知しやすく、怖がりながら接すると馬も人に対し警戒心を持つという。その姿を通し、ありのままの自分を見つめ直す。「動物介在教育」や「乗馬療法」といわれ、獣医学で権威のある麻布大学などでも研究されている。一般利用者のほか、フリースクールなど不登校児施設との連携も行う。代表の宮元誠さんは「馬から学ぶことは人それぞれ。強制ではなく、利用者が自発的に何かを得るのが理想」と話す。
自然体の自分に
馬の前で求められるのは「素の自分で向かっていくこと」。それが受け入れられることは大きな安心感に繋がるという。宮元さんは以前、不動産関係の会社を経営していた。多忙な毎日と高額な金銭のやり取りに付随する人間同士のトラブルに辟易することもあった。30年ほど前に思い切って馬を飼い始めると、次第に心のバランスが取れていくのを感じた。馬の与えてくれる不思議な力。それを何かに活かせないかと5年前、退職を機に同施設を開設した。
「人間って面白い」
技術向上のための指導が中心となる一般的な乗馬クラブとは異なり、「サポーター」と呼ばれる会員は、馬房の掃除やエサの用意など馬の世話を全般的に行う。現在飼育している馬は4頭。60人近くのサポーターが登録しており、それぞれのペースで馬との交流を重ねる。
休日を利用し通う50代の男性は、平日は仕事に追われる日々。「馬の生活に関わることがリフレッシュになる」と話す。逗子から通う40代の女性は、当時不登校だった娘と一緒に訪れた。「多感な時期で、人にどう見られるのか常に緊張していた。でも馬の前では無理しなくていい。それが娘にはよかったみたい」。今では自分の方が夢中になり、週に5日通っている。
今後は、より多くの人に活動を知ってもらうため、「大学や研究機関との連携の可能性を探っていきたい」としている。「馬を通して変化していく人を間近で見ていると、『人間って面白いなあ』って思うんですよ」と宮元さん。自身も愛馬との交流で価値観が変わった1人。馬の持つ不思議な力に魅了されてやまない。
■一般社団法人湘南国際村ランドスケープ集団/三浦郡葉山町上山口1835の1【電話】046・878・8650
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