横須賀の経済発展を支えた重工業分野が衰退傾向にある中で、次の成長産業として「観光」が大きな期待と注目を集めている。吉田雄人市長と小泉進次郎代議士。次世代をけん引する2人の若い政治家はどんなビジョンを描いているのか。今月8日、横須賀商工会議所が「地域産業の活性化」をテーマに開いた講演会の内容をまとめた。
「産業の柱にする」吉田雄人 横須賀市長
観光への取り組みを語る前に人口減少の危機感を共有したい。横須賀市は1993年の43万人をピークに減少へと転じ、現在は40万6千人。社会増減の対策は進めているが、自然増減を押しとどめることはできない。これが経済活動にも影響を与えている。市内の製造業・小売業は右肩下がり。一方で、宿泊業や飲食業といった観光にダイレクトに結びつく産業は傾きが小さい。市内で観光業はインパクトを受けにくい傾向があり、行政もこの分野に注力してきた結果、入込客数が増加している。人口減少は避けられない。そうした中で雇用を増やす産業を盛り立てていく必要がある。「働く場所」は「住む場所」に直結する。目減りしていく消費を市外からの来訪者で賄い、経済を維持していかなければ。こうした背景を踏まえ、横須賀市は観光を産業の柱に据えていく方向で様々な手を打っている。
■気運の高まり
国の「地方創生」では、自治体の実情に沿った将来展望を提案すれば、応えてくれる。先ごろ県も総合戦略を発表し、「三浦半島の資源を活かした地域の活性」を目標に位置付けた。
市では今年から観光協会を一般社団法人会化に踏み切った。これまでは、行政の感覚で観光事業を展開してきたが、民間のノウハウを持ちこんでもらうことが狙い。議員提案で「観光立市推進条例」が制定され、行政も「観光立市推進基本計画」の策定に取り掛かっている。ここでは、市民や事業者の意見を取り入れ方向性をしっかり示していく。
観光事業の具体的な取組みも紹介したい。課題となっている観光拠点をつなぐ方策として、観光バスが施設の駐車場を相互利用できるパスポートを用意、周遊しやすい仕組みを設けた。インバウンドも見逃せないが、一番身近な外国である米海軍基地に目を向け、2万人の在住者をターゲットに消費を促す環境整備を進めている。合わせて”タンス通貨”と呼ばれる日本人が保有するドルの利用を呼び掛けるキャンペーンも実施。このほかにもアニメやゲームといった”ニッチ市場”の開拓にも挑戦中だ。
文化庁の「日本遺産」登録に向けた動きも進めている。旧海軍の鎮守府が置かれていた4市(横須賀・呉・佐世保・舞鶴)で実現に向けた下話を始めたところ。千代ケ崎の砲台跡や走水の低砲台跡の開放に向けた準備もしており、歴史を切り口にした集客戦略を描いている。
久里浜では、温浴施設と冷凍ケーキ工場の企業誘致に成功した。すでにコロッケ工場と水産加工場があり、港湾施設が工場直売の拠点として機能していくことも願望として持っている。
「行政も商売する時代」と言われているが、私はそう考えない。多くの自治体が観光事業に手を出し失敗している。行政は仕組やきっかけづくりを役回りと捉え、民間の事業者に経済活動を頑張ってもらいたい。
「あるものに着目」小泉進次郎 衆議院議員
観光立市だ、街を盛り上げようという気構えは大事だが、ではどれくらい横須賀は観光で稼いでいるのか。GDPの割合で言うとどうなのか。まずはそれを理解することが前提となる。
地方創生の成功例として有名な島根県の離島、海士町を紹介したい。この島は発想がユニーク。「ないものはない」と書かれたポスターが島中に張ってある。便利なものはないがそれ以外のものがあるという精神で町長や職員が給与を削減し、それを知った住民も自ら補助金を断った。浮いたお金を少子化対策や、島で獲れる海産物を急速冷凍し遠方に届けるシステムを作ることに充て、成功。今では島唯一の高校に全国から島留学を受け入れるほどになっている。私はこの「ないものはない」という思いをぜひ横須賀にも持ってほしい。東京・川崎・横浜の3大都市にあるものは横須賀にはない。だが、その3大都市にないものを横須賀は提供することができる。
最も驚いた取り組みの一つが岩手県二戸市にある酒蔵。厳格なユダヤ教徒は認定を受けた飲食物しか口をつけないのだが、二戸市の酒蔵がそこに目を付けた。横須賀と比べ物にならない小さな町で、どこだったら大手と張り合えるか、何が自分たちにできるのか。必死で知恵を絞り、”ニッチ市場”を開拓した素晴らしい例だと感じている。
横須賀が観光で稼ぐというならぜひ意識してほしいことがある。現在訪日外国人が観光で消費するお金は約2兆円、国はこれを4兆円まで上げたいと考えている。実現するとその規模は鉄鋼業と張り合える経済市場となる。観光のポテンシャルの高さがこの数字からも理解できると思う。
そして現在、日本に訪れる外国人観光客は過去最多。国や地域によって日本に求めるものには異なった傾向が見て取れる。アジア人はショッピング、欧米人は伝統文化や歴史を求めている。では横須賀はどこをターゲットに何を提供するのか、緻密な分析を行う必要がある。
外国人が9人訪れれば、定住人口が1人減った損失額とされる125万円を賄える。これを意識し、「良かった」だけで終わらず、消費してもらうことで市場を拡大していくことが重要だ。
■地域特性を理解
国が開発した「リーサス」(地域経済分析システム)という誰でも使えるビックデータがある。例えば猿島の来島を世代、シーズン、エリア別に把握できる。こうしたツールを有効活用し、地域特性も絡め人口減少や観光集客のための政策や対策を講じる必要がある。
ひとつの事例として長井の「民泊」を紹介したい。
地域の民家に修学旅行生を宿泊込みで受け入れているもので、「このままでは町が衰退していく」という思いで必死に対策を打っている。横須賀には食・海・人のつながりがある。あるものに着目し、他との違いを出し、盛り上げてほしい。
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