キャッチボールする相手すらいない─。
今から7年前、大楠高校の野球部は廃部の危機に見舞われた。3年生が引退すると部員は6人に。残ったメンバーも人間関係のもつれなどから次々とグラウンドから姿を消し、最終的に残ったのは岡本だけとなった。あきらめの気持ちが頭をよぎったが、踏みとどまらせたのが自分との約束。
「高校3年間は、なにがあっても逃げない」
中学時代は柔道部。練習の厳しさに音を上げ、中途半端な形で終わらせてしまった。自分の精神的な弱さを克服したい、と飛び込んだ環境。もう一度、気持ちを奮い立たせた。
チームづくりは自分が動くしかなかった。新入生を前にマイクを握ってこう叫んだ。「自分も野球未経験者でした。初心者でも大丈夫です」。熱心に行った勧誘の成果もあり、再スタートを切ることができた。
試練は最後の夏にも訪れた。大会間際にアキレス腱を断裂する大ケガ。試合では、テーピングで固定し、1打席だけ立ちデッドボールで出塁。次打者がヒットを放つと2塁めがけて思い切り走った。「(腱が)切れてもいい。本気でそう思ったことだけ覚えている」。結果は1回戦でコールド負け。悔しさはあったが、仲間たちと精一杯戦えたことの満足感のほうが大きかった。
* * *
「自己限定するな」。当時の監督の言葉を今も心の支えにしている。高校時代の3年間を経て、「できない」「やれない」は口にしなくなった。
2年前に結婚し、1歳の男児のパパとなった。現在は地元不動産会社のウスイホームで営業職に就いている。「高校野球が自分を変えてくれた。上手い下手や勝ち負けよりも大切なことを学んだ」。いつの日か息子にそんな話をしてみたいと思っている。
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