神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS
横須賀版 公開:2019年5月1日 エリアトップへ

佐島の漁師 岩崎さん 「浜ことば」記して伝える 口承を2年かけて冊子に

文化

公開:2019年5月1日

  • LINE
  • hatena
2人の孫の名前の入った船の前で。タコ漁をメインに、今の時期はヒジキがシーズンだという
2人の孫の名前の入った船の前で。タコ漁をメインに、今の時期はヒジキがシーズンだという

 「カタァアッタカラ ケェルゾォ(少量の漁獲があったので帰ります)」―佐島で交わされていた”浜ことば”の一例だ。日本の沿岸の港町にはそれぞれ「漁師言葉」が伝承されており、市内でも長井や秋谷、走水などにも同様に独自の言語文化がある。

 「日常会話ではあまり使われず、消えゆく言葉。口承の記憶を残したい」。佐島在住の漁師、岩崎健次さん(71)が昨年12月、この地域で使われてきた「浜ことば」を1冊にまとめた。

 「佐島の言葉は荒っぽくてケンカしているように聞こえる」。そう言われたことがあるという。漁労関係―港や船の上だけでなく、日常生活の会話にも入り込んでいる。促音(ッ)や拗音(ャ・ュ・ョ)が多く、長音がァやォとなるなど、単語が「短い」のが特徴だ。「海は生死を分けるような厳しい世界。語句が短く強いのは、その影響かもしれない」と分析する。

定年後、タコ漁師に

 両親ともに漁師の家庭。漁に出る父の背中を見て育った。遊び場は船や佐島の浜。漁場や天候の見方も教わったが、進路を考える年齢になると、父親からは「陸(おか)に上がれ」と言われた。不漁が長く続いた時期で「漁業を続けていくのは難しいかも、と将来を案じてくれたのかな」と振り返る。自動車メーカーに就職し、定年まで勤め上げた。

 地元でのんびり過ごしながら「船のエンジン代にでもなれば」と61歳で漁師に転身。仕事時間に比較的融通の利くタコ漁を始めた。父親の手伝いから40年以上経っていたが、そこで耳に入った「浜ことば」を自然と理解していた。「自分の中に言葉の記憶がきちんと残っていた」

市民記者として発信

 佐島への想いをさらに強くしたきっかけは、2011年の東日本大震災。避難所で地元の町内会長が80歳を超えてもなお地域のために尽力する姿に心を動かされた。「自分も佐島のために何かできないか」。町内会の役員になり、さらに地元紙が養成する市民記者に手をあげた。佐島や漁業に関連した記事を手掛ける中で、取り上げたのが浜ことば。「この町の人がどのような言葉を使って生活してきたのか、このままでは忘れ去られてしまうのでは」。そんな危機感もあった。

 同級生からの勧めもあり、これを五十音順に拾って書き記すこと2年近く。耳から耳へと伝えられた”浜ことば”は400語にのぼった。自分がこの地で暮らし、漁業に携わった証でもある。

懐かしさと伝承の想い

 今では80代前後の現役漁師が使っているくらいで、浜ことばで話しかけても、標準語で答える・自分からは使わない―という世代が多くなったと感じている。だからこそ「文字にして残すことに意味がある」と語る。

 冊子にまとめて、周囲からは「懐かしい、昔を思い出す」との声を掛けられた。佐島観光親善大使の則竹栄子さんは「祖父や父の口調が思い起こされた」と話し、「(岩崎さんは)地元に誇りを持った人。これこそ佐島の宝」と続けた。

 調べていて不思議に思うこともあった。佐島には古い時代から伝わる御船歌がある。祝いの席で披露される「誉めことば」は、浜ことばではなく”ヨソイキ言葉(標準語)”が使われているのだ。経緯は分からなかったが、それも佐島で受け継がれた文化のひとつと考えている。

 「誇りを持って伝えたい」。その心意気は、地域に届いているはずだ。

横須賀版のローカルニュース最新6

市長アバターが英語で発信

横須賀市

市長アバターが英語で発信

生成AIで動画作成

5月3日

誰でも気軽にものづくり

汐入サポセン

誰でも気軽にものづくり

5月3日

お金の大切さ 子どもに

横浜幸銀信組

お金の大切さ 子どもに

オリジナル冊子を制作

5月3日

恐竜一色に

ウィング久里浜

恐竜一色に

5月3日

佐原と武の英雄譚

歴史講話

佐原と武の英雄譚

地元町内会が共催

5月3日

中世の遺構を公開

まんだら堂やぐら群

中世の遺構を公開

5月3日

本まぐろ直売所

4/26~5/6は休まず営業、毎月第2・4土日は特売日!

https://www.yokosuka-honmaguro.com/

<PR>

意見広告・議会報告政治の村

あっとほーむデスク

  • 5月3日0:00更新

  • 4月26日0:00更新

  • 4月19日0:00更新

横須賀版のあっとほーむデスク一覧へ

コラム一覧へ

横須賀版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2024年5月3日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook