精密な縮小模型に巨大化した写真やオブジェ。スケールをテーマにした作品を集めて横須賀美術館で開催中の「縮小/拡大する美術 センス・オブ・スケール展」(6月23日(日)まで)に、市内根岸町在住の和風ドールハウス作家、高橋勝美さんが作品を出品している。今月19日にはアーティスト・トークで自身の作品解説を行った。
一定の縮尺で作られた模型の家をドールハウスと呼ぶ。和風ドールハウス作家を名乗る高橋さんの作品は、庶民の生活の息づかいを感じるものばかり。昭和の風景をそのまま真空パックのように閉じ込めて再現している。
生まれ育った横須賀に実在した(している)建物や店舗を題材にした作品も多く、今回の企画展では不入斗の銭湯「あたり湯」、衣笠栄町の「大木理髪店」、三春町の「京浜急行電鉄堀内営業所(現京浜急行バス堀内営業所)」の3つが飾られている。
遅咲きの表現者だ。52歳で作品づくりをスタート。当時、北久里浜にある和菓子店「さかくら総本家」の製造部門で働いており、いたずら心で上生菓子のミニチュアを作成して同僚らに見せたところ、思いのほか評価を得ることができた。気をよくして、次は店舗づくりに挑戦。細部にこだわりながら再現していくことに夢中になった。誰に習うでもなく、自分の感覚だけを頼りに我流で技術を身に着けた。
主眼に置くのは、「消えゆく昭和の建物。誰かの思い出を形にしていくこと」。お目当ての対象を見つけたら取材交渉。スケールを持ち込んで建物から小物まで徹底的に実測する。本人曰く「記憶よりも記録」。一つの作品を完成させるために必要な情報は大学ノート3冊分になるという。細部のこだわりも徹底している。銭湯の体重計の足を乗せる位置の黒ずみまで忠実に再現。部屋に何気なく置かれたカップヌードルの図柄も作品の時代と一致させるなど時代考証も完璧。「作品に嘘があると鑑賞者が現実に引き戻されてしまう」。
現在、手掛けているのは江戸東京たてもの園に復元展示されている昭和の風情を醸す金物店。創作意欲を掻き立てられたという。
注文は取らない、人には教えない―。創作活動は気の向くままだ。
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