近年、各地で増えている「子ども食堂」。食を通じた子どもの孤食・貧困の問題解決、居場所提供、交流促進などを目的に横須賀市内でも広がりを見せています。
「食堂」と一口に言っても形態や役割は様々。今回は食と学習支援、居場所づくり、ひとり親支援、カフェによる運営ーの4つの異なる取り組みをピックアップ。発足経緯や活動内容、今後の展望などを取材しました。
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よこすかなかながや 「しっかり食べる」活力に
今年のこどもの日で立ち上げ5年になる「よこすかなかながや」。代表の和田信一さんがこだわるのは「常設」の子ども食堂。長屋のような民家を拠点に、朝夕の食事の提供が取り組みの柱だ。月曜日から土曜日(長期休業日含む)の夕食に加えて「朝からしっかり食事をしてから登校を」と学校のある平日の”あさながや”を実施。中高生にお弁当を持たせることもあるという。食材は企業や団体・個人からの寄付を中心に賄い、ボランティアが交代で台所を担当する。
日々の利用者は10人に満たないが、コロナの影響による生活困窮など、多くが家庭の事情を抱える。学校に行きづらい児童生徒もいる中で、「学習を支えたい」と市外の企業がオンラインで指導できるサービスをボランティアで提供してくれている。長年の活動から「子どもたちが社会に出て生活できる力につなげる支援も必要だと痛感している」と和田さん。ただ、個々の状況に応じながら向かい合う難しさにも直面している。コロナ禍の折、子どもの居る家庭に食材を配達するフードパントリーや弁当配達の事業も始めた。当面の懸念はボランティアの確保と運営資金の捻出。「心と命を救いたい」という信念が活動のエネルギーだ。■池上4の5の11/080・3445・7636
よこすかひとり親サポーターズ・ひまわり 親支援で子どももケア
支援が必要な子どもの中にはひとり親世帯も含まれる。そのひとり親も対象に活動する当事者団体「よこすかひとり親サポーターズ・ひまわり」。市の交流会で出会った3人が、同じ境遇の人たちのニーズに合った交流イベントや勉強会を開こうと2009年に設立。14年からは市から委託を受け、現在はほぼ毎月1回のペースで活動する。お花見やカレー作り、米の宅配支援のほか、年末年始向けの調理に必要な食材の提供も企業の協力を得て実施。金銭的に将来設計をシミュレーションするセミナーなど、当事者が感じる不安や悩みを汲み取った内容を展開している。
「ひまわり」が指すひとり親は離婚者に限らず、未婚・非婚者、法的には離婚前の人なども含まれる。「法的なサポートを十分に受けられず、子育てに困っているひとり親もいる。そうした方たちが自立して生きていく力をつける手助けになれば」と、代表の佐藤智子さん。現在は子育てがひと段落し、本来なら”卒業”だが、「ひまわり」の活動を継続的なものにすべく、現役メンバーにこれまでのノウハウを引き継ぎ、育成している最中だ。「次に困る人を出さないためにも活動を続けていくことが、将来的に子どもたちの幸せにも繋がるのでは」■yokosuka_himawari@yahoo.co.jp
RICE ―CAFE 善意の連鎖を期待
YRP野比駅前にある「RICE ―CAFE」では、昨年の11月から店舗運営に「子ども食堂」の役割を加えた。
甘口味に仕込んだカレーを用意して営業時間中、一皿100円で提供。持ち帰りを求める声にも応え、ハンバーグなど数種のメニューから選べるこども弁当も100円で販売している。今では小学生から高校生まで月平均で約100人の利用があるという。
「経済的な困難を抱える家族の増加などをニュースで見聞きし、地域のカフェができる支援として始めた」とスタッフの松本夕子さん。自身もひとりで子育てをしていた時期があり、「放課後の過ごし方への不安や心配を理解できる。食事や弁当の提供だけで根源的な問題を解決できるとは思っていないが、身の丈の活動としてスタートさせた」
レジ横に募金箱を設置するとともに、おとな弁当と自家製スイーツの応援購入を呼び掛け、これを原資に充てている。
松本さんは、地域で子どもを見守る雰囲気を浸透させたい考えだ。店頭に置かれた黒板にはこんな記述がある。「たべたいものをおねえさんにいってね。 おかねはあとでもいいし、おとなになってからでもいいよ」■野比1の10の4/【電話】046・807・3158
み〜なの家 なかよし食堂 安心安全な食と居場所作る
食事を通してコミュニケーションできる場所をー。NPO法人みんなの居場所よこすかが運営する「なかよし食堂」は、京急久里浜駅そばの住宅地で毎月第3木曜に開かれている。6年前、子どもの貧困解消の一助になればと子育て世帯を対象に始めたが、そこでは家族で団らんしたり、参加者同士の交流が生まれたり。「み〜なの家」との屋号どおり、いつしか”みんなの居場所”として親しまれていった。
国産食材使用、化学調味料不使用で手作りする和食中心の献立がこだわり。「豆や芋の煮物を必ず1品。おばあちゃんが作るおかずです」と、理事長の木下青子さん。バイキング形式で弁当箱に詰めて食べる企画など、趣向を凝らしながら食の大切さ、大勢で食卓を囲む楽しさを伝えてきた。
しかし、新型コロナにより状況は一変。コロナ禍で困難を抱える家庭がある一方で、3密対策が賑やかな会食や居場所という、なかよし食堂の根幹に影響を与えている。
学校の臨時休業や夏休み中の昼食支援を目的に、20年夏から弁当の持ち帰りに切り替え。1食300円で約30食を提供する。「おいしかった、楽しかったと喜ぶ姿が私達の原動力。できることを模索し続けたい」■久里浜1の6の8/【電話】046・845・6321
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