新設校の1期生。もちろん部員は1年生のみ。自前のグラウンドがなく、他校の部活動に遠慮しながら練習に励む日々だった。そんなチームが夏の大会の初戦をコールド勝利で飾り、地元紙にデカデカと掲載された。「このメンバーとなら甲子園を狙えるかもしれない」。本気でそう信じ、授業と睡眠以外の時間はバットを振り続けた。
学校の練習を終えると監督の自宅の庭先で打撃特訓。「センスのなさを練習量で埋める」という前時代的な発想で、365日これを繰り返した。「それでも打てなくて、打てなくて悔し涙を流しながら帰宅したことを覚えている」
高校3年の最後の夏。チームはベスト16まで勝ち進み、準々決勝で超高校級と騒がれていた愛甲猛投手を擁する横浜高校と対戦した。2対4で惜敗したが、大会を通じて6割近い打率を記録。愛甲投手からもヒットを放ち、「努力の先にあるものを掴むことができた」。これが今につながる人生の指針になっている。
教員となって高校野球の監督を40年近く務めた。自身の経験から選手には努力を求めがちだが、「自分と違うタイプもいて、指導の難しさと喜びをたくさん味わってきた」と振り返る。全国を志すチームもあれば1回戦突破を目指すチームも存在し、勝ち負けを超えた価値を伝えてきた。「(高校野球は)力の傾け方を学ぶ場所。社会を生き抜く力を身に付けることができる」というのが持論だ。
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60歳以上でチームを編成する還暦野球のスタープレーヤー。高校時代と同じようにがむしゃらに練習し、日本一を目指している。先ごろ、かつての横浜高校の名選手と対戦する機会があり、三振に切って取った。「あの頃と同じ緊張とワクワクを今も感じている」
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