181cmの長身に剛速球を繰り出した大きな手が野球選手だった過去を物語る。長沢にある介護付き有料老人ホーム「プラージュ・シエル湘南長沢」で介護福祉士として勤務する蒲谷和茂さん(51)は、元プロ野球選手(投手)だ。実力本位の過酷な世界に身を置き、燃え尽きるまで挑戦した20代を経て、飲食店経営、ゴルフショップ店員と様ざまな職種を経験。およそ15年前から現在の仕事に就いている。持ち前の体力と人当たりの良さで、入居者や同僚スタッフから絶大な信頼を得ている。
横浜市出身の蒲谷さんは、関東学院六浦高校を夏の県大会ベスト4に押し上げた立役者。速球を武器に「あわや甲子園出場」と周囲を沸かせた。卒業後に社会人の東芝に進み、ソウル五輪の野球日本代表候補となった矢先、順風だった野球人生を狂わせる交通事故で瀕死の重傷を負った。「死の淵をさまよって目が覚めたのが2週間後」。再起不能を誰もが疑わなかったが、当人だけは野球への情熱を捨てなかった。東芝を離れ、ひとりでリハビリを重ねながら3年間ひたすら練習を続け、西武ライオンズにテスト生として入団を果たしたのだ。だが、往時の球速は戻らず、1軍での登板機会に恵まれないまま引退を余儀なくされた。「当時を振り返ると、悔しさよりも晴れやかな気持ちが勝っていたように思う。全力で限界に挑んだからこそ、あきらめることができた」と蒲谷さん。
紆余曲折を経て、介護の世界の扉を開いたのは、高校時代にバッテリーを組んでいた親友だ。「高齢者施設を立ち上げる。手伝ってもらえないか─」。勤務先のホームの経営者である山田衛さんが誘った。努力家で誠実な人柄を知っており、人材として申し分なかった。
ホームではベテラン職員として責任ある立場。介護の現場は体力・精神の両面で厳しさを伴うが、「人から感謝される仕事に就いている、という感覚を日々得られる。それが支えですね」
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