映像のデジタル化が進む今の時代、「フィルム」で映写機を回し続けているボランティア団体、「16ミリ試写室」。1977年1月に発足、どこでも素敵な映画館――を掛け声に、市内の図書館やコミュニティセンター、福祉施設で年間100回近くの映画会を催している。創設10年目から会長を務めるのが松澤澄江さん(ハイランド在住・84)。「40年近く、仲間と楽しく続けているこの活動こそ、私の生きがい。『社会教育』の種を撒き続けたい」
心に響く「作品」届け続ける
子ども会で出会った「16ミリ試写室」による映画上映会の活動。そこで誘われ、市の操作技術認定講習会「お母さんの16ミリ教室」を受講することになった。市の社会教育主事から、視聴覚機材を使った社会教育の意義を熱心に説かれ、「試写室」の活動へ足を踏み入れた。
上映会で使うフィルムは、市や県の図書館から借りたもの。子どもや高齢者など対象に合わせて選んでいく。会独自の活動として、有料の自主上映会を始めたのは、2001年から。「街の映画館で上映される機会は少ないけれど、心に響く作品を届けたい」というメンバー一同の想いがあった。「ボランティア団体だから活動資金がなくて。それでも、1回やってみるというのが私たちの信条」。家の中の整理がてら不用品を持ち寄り、どぶ板のバザーに参加。10万円が集まった。これを元手に「地球交響曲(ガイアシンフォニー)」の上映会を開いた。「前向きな仲間がいたから、初めてのことにも挑戦できた」。以降、自然や子ども、平和などをテーマに年2〜3回の有料上映会を欠かさず続けている。
「ドキュメンタリーは考える道具と教えられた。見るだけでなく、作り手の想いや気付きを共有したい」。監督や作家・脚本家などを招いて語る場を設けていることも、こだわりの一つ。「深く考えるきっかけを”繋ぐ”役割になれば」と語る。
手と足、頭も使う
中央官庁で働くキャリアウーマンだったが、横須賀へ転居し、子育て中心の生活に変化。そこで出会ったのがこの活動だった。
重さ10kg超の映写機を持って上映会場に出向くほか、作品資料を作成したり、年間スケジュールを練ったり。「手と足に頭もたくさん使う」と笑う。「もともと理系の考え方。理論型で進め方がぶれない…というか、ちょっと頑固かも」。会長としてのそんな性格を表しているのが、定期発行する「試写室だより」と周年で作成している記念誌「かがやき」だ。上映やイベントは終わってしまえば形に残らない。会の活動を発信すると同時に「足跡を残していきたい」という強い想いがある。毎年の活動計画書も細かく作成。丁寧な記録の積み重ねは、会と自身の歴史そのもの。これまで、大病や事故など、平穏な道のりではなかったが、見知らぬ土地で広がった縁が人生を豊かにしてくれている。
ボラ活動で元気に
コロナ禍で集まることもままならない時期に、「ボランティア活動が元気の源と気付いた」。少しずつ制限が緩やかになり活動が再開すると、自宅でメンバーや友人に食事をふるまうことも。頂き物の春キャベツで『お好み焼き会』、庭のフキノトウで『天ぷら会』―と、おもてなしも楽しみの一つ。上映会も同じで「集う人たち」の笑顔が最高の活力だ。
かつて100人を超えた会員も今は、自身を含めて14人。9月には映画「地球交響曲」の有料上映会とコンサートが控えている。今年度の定期映画会の予定も、3月までびっしり。「16ミリ」の独特な味のある映像とともに、子どもから大人まで「映画」との良き出会いを繋ぎ続ける。
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