横須賀を舞台に谷戸の魅力を発信する短編映画「夏の一歩」が完成を迎えた。地元有志や企業からの支援を受け制作された同作品。1月27日(土)を皮切りに市内各所で上映会が行われる。
地元の若者支援やコンサル事業を手掛ける(一社)NELDが同作品の制作を発表したのは昨年4月。代表理事を務める三田希美子さんの「横須賀といえば海のイメージが強いけど、山や谷戸にも魅力も発信したい」という思いのもと、クラウドファンディングで資金集めを開始。地元企業などの協賛も得られ、当初の目標の2倍以上となる164万円の支援額を達成した。
撮影は夏の猛暑の中、逸見地区の谷戸にあるカフェや根岸町の山林に囲まれた古民家などで行われた。「観光地としてフォーカスされにくい地域」である谷戸について三田さんは「喧騒から離れた静かな空間。何か不思議な出来事が起きそうな雰囲気がある」と魅力を語る。
脚本・監督を務めた芥生(あざみ)浩隆さん(坂本在住)をはじめ、出演者やスタッフには横須賀にゆかりのあるメンバーを多数抜擢。主人公の生家に食材を運ぶパルシステム配達員の役を演じたルイスショーン航希さん(津久井在住)は「横須賀に住んでいても知らない場所や人に出会える機会となった」と撮影を振り返った。今月から一般向けの上映会も開催され(詳細は画像参照)、会によって作中で主人公が考案した「和っふる」の提供や出演者の登壇なども予定されている。
谷戸散歩のすゝめ
「夏の一歩」は横須賀の谷戸を舞台とした作品だが、近年では市内在住者でも若者世代を中心に「谷戸」について知らない・行ったことのない人が増えてきているという。谷戸とは本来「行き止まりの谷」を指す言葉。横須賀では明治初期に軍関係者が入居する際、狭い土地を有効活用するため谷戸地域が開発され、戦後も多くの住宅が整備され各地に集落を形成した。市民常識として「横須賀のトンネル数は日本一」というものがあるが、多くは谷戸と谷戸をつなぐためのインフラとして整備された経緯がある。
谷戸に向かうまでの道は車が通れないほど細く、急な階段になっていることが多い。近年ではその不便さから人口減少と歩調を合わせるように空き家問題が深刻化している。しかし、入り組んだ迷路のような構造や、急坂を上り切った先で見える景色など、谷戸でしか味わえない魅力に憑りつかれる人も多く、ウォーキングツアーが開催されることも。「夏の一歩」に出てくるような谷戸道を探しに、休日は横須賀をいつもと違った視点で楽しんでみてはどうか。
(中東海人)
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