近年の魚価低迷の流れの中で、これまでは価値が付かなかった未利用魚「アカエイ」を新名物にしようという動きがある。東京湾で夏場に相当数が獲れ、身も美味なアカエイ。鋭利な棘で他の魚や網を傷つける上に商品流通されないため、漁業者の間では厄介者扱いをされてきた。しかし、先日行われた試食会をきっかけに市内の飲食業関係者などが商品化に興味を寄せ始めている。
アカエイは、北海道や三陸地方と九州の一部で現在も一般的に食されているが、関東地方では食用として馴染みのない魚。大きいものでは全長2mにもなる。危険な毒針を持ち、体表にヌメリが多いため、これまでは一般流通には向かないとされてきた。
しかし、「新鮮なうちに生け締めし、血液と神経を抜いてヌメリを取る処理をしっかり行えば、身に匂いはなく、各部位で特徴的な食感が楽しめる」と提唱するのが、元漁師という経歴を持ちながら全国各地で地魚の利用法を普及推進している水産庁職員の上田勝彦さん。長崎での漁師時代にアカエイ料理に親しんできたという上田さんは、東京の葛西臨海公園湾岸に出没し海水浴客を悩ませていたアカエイを美味しく食べることで駆除するという取り組みも行っている。
その実績から今月14日、東部漁協夕市会主催で上田さんを講師に迎え、市内飲食業関係者を集めての「アカエイの調理実演・試食会」が行われた。
アカエイ七変化
「調理に多少の手間はかかるが、安定的に獲れるとすれば、『他では味わえない味覚』ということで名産品化できる可能性をもつ魚だと思う」と上田さん。
約2時間半の調理実演では、生き締めから身を本体とヒレに分け、それを「皮付き」や「軟骨付き」などと部位別に料理。刺身、湯引きの和え物、ムニエル、中華炒め、肝刺し、味噌汁の計7品が作られ、参加者に振舞われた。
追浜で鮮魚を扱う居酒屋を経営する下澤敏也さんは「肉質・食感など様々な面で面白い素材。とにかく使ってみたい」。汐入で洋食店を営む大島雅明さんも「軟骨部分の唐揚げや、ワイン蒸しにしてクリームソースで和えるなどフレンチで提供したい」と前向きな姿勢を見せた。
アカエイは魚を多く食べる温暖な時期のものが美味だという。「横須賀でも漁師の間では煮付けなどにして普通に食べられているが、商品流通はしていない。味がよいのでもったいないと思った」と、これまで市内でアカエイと同様に未利用魚だった「コノシロ」の活用推進も行ってきた同会漁師の栗山義幸さんは話す。
生き締めで新鮮なものでかつ下処理には慣れが必要という課題はあるが、今後は同会で直売を行うと共に、市内飲食店を通じて商品化を目指したいという。
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