多摩市では2016年6月から2年計画で、市内のツバメ調査を実施している。このほど今年度の予備調査が終わり、4月から本格調査が始まる。市では、30年前にも調査を実施しており、今回の予備調査と30年前を比較した結果、種によって巣の数はほとんど変わらないものの、場所に変化がみられるという。調査団によれば「人間社会の変化がツバメにも影響しているのでは」と話している。
多摩市では、86年・87年にツバメの生息調査を実施。30年が経過し、そのツバメを通じて環境の変化を考察するため、昨年6月に、市や多摩市文化振興財団、市内の環境団体、市民によって「多摩市ツバメ調査団」を発足。30年前の調査結果と、葉書やインターネットで寄せられた市民の情報をもとに、調査員が実際に歩いて巣を確認して回った。
調査対象は、市内で子育てをしているツバメ、コシアカツバメ、ヒメアマツバメ、イワツバメの4種類。渡り鳥であるツバメは、春に日本にやってきて4月頃と6月頃の2回子育てをし、秋に旅立つ。子育て中は巣の近くで生活し、子育て中以外は集団を作って河川敷などの「ヨシ」の葉で寝ているという。
賑わい場が変化
今回の予備調査で発見した「子育てした巣」「子育てをしていたかは不明な巣」の数は、ツバメが182、コシアカツバメが20、ヒメアマツバメが2。30年前の予備調査ではそれぞれ184、32、4とその数はほとんど変わらなかった。
変化が見られたのは巣を作っている場所。30年前も今も関戸・一ノ宮地区に多い点では変わらないものの、以前は商店街の軒先で多く確認されたが、今回はビルや民家、小中学校でその数が増加。ツバメは、元来エサを集めやすい建物の1階や2階に巣をつくる傾向がある中で、今回はマンションの5階や9階などでも巣が確認された他、尾根幹線道路周辺の大型施設で大規模な巣が見つかったという。
調査団では「関戸・一ノ宮地区に多いのは、巣の材料やエサが取りやすい多摩川が近いから。もう少し上流の河川敷に集団ねぐらがあることもわかったのでそれも関係していると思われる」と話している。巣をつくる場所が変わっていることについては「ツバメは外敵に襲われにくい賑やかな所にほど巣をつくる傾向があるので、人間社会の賑わっている場所が変化していることが影響しているのでは」と推測する。
数の差が顕著だったのはイワツバメ。イワツバメは、もともと多摩にはいない種で、1931年に連光寺にあった鳥獣試験場に、害虫を食べる益鳥として放され、多摩で繁殖を続けているという。30年前の巣の数が288だったのに対し、今回は5と激減しており、その理由について同調査団では「本格調査で考察したい」と話している。
ツバメと共生を
4月からの本格調査を前に調査団は「ここまでしっかり調査をしている自治体は珍しい。繁殖期間の4月から観察に動くことができるので、さらに新たな発見があるかもしれない」と期待を寄せる。同時に「巣を壊すのは違法行為。糞除けを作ったりして共生できるよう協力を」と話し、「調査では集合住宅内に入ることが出来ないので、巣を確認したらぜひ情報を寄せてほしい」と呼びかけている。
なお、本格調査にあたり、現在調査員を募集中。詳細は市環境政策課【電話】042・338・6831へ。
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