生活習慣と社会環境の変化によって近年、患者数が増加している糖尿病。多摩市では、糖尿病の合併症による重症化を防ごうと、多摩市医師会、多摩市薬剤師会、民間事業者と連携して、かかりつけ調剤薬局で生活習慣病改善の支援を行う事業を昨年度から実施している。今年度の実施にあたり、対象者に6月以降、通知の送付をする予定。「重症化する前にぜひ相談を」と市では呼びかけている。
高血圧や高脂血症、肥満症、動脈硬化などの疾患が挙げられる生活習慣病。その中でも罹患患者や予備軍が多いとされているのが糖尿病だ。
糖尿病は、血液中に含まれるインスリンというホルモンがうまく働かなくなり、慢性的に血糖値が高くなる病気。放置すると網膜症、腎症、神経障害などの合併症を引き起こすこともあるという。特に糖尿病性腎症は進行、重症化し腎不全に陥ると人工透析が必要になり、患者のQOL(生活の質)が低下してしまう。加えて、人工透析患者の一人当たりの医療は年間約500万円とされ、医療経済的にも社会的な負担を強いられてしまうのが現状だ。
そこで市では、糖尿病性腎症の重症化リスクのある多摩市国民健康保険被保険者に対し、生活習慣の改善のアドバイス等を行うことで、重症化を防ぎ、被保険者の健康保持・増進や、国民健康保険の医療費適正化をめざすことを目的として、「糖尿病重症化予防事業」に取り組んでいる。2013年度からは委託事業者の管理栄養士等が市内の公共施設で保健指導を実施。昨年度からは、医師会と薬剤師会、民間事業者の4者連携で、新たな予防事業となる「薬局モデル」を導入している。
同モデルは、市内在住の40歳以上が受けられる特定健康診査の結果から糖尿病性腎症のリスクが高い人を抽出。糖尿病性腎症の重症度に応じて、かかりつけの薬局で薬剤師による服薬管理や、生活習慣の改善に向けた目標設定と進捗状況の支援・管理のプログラムを継続的に実施するというもの。地域の薬剤師とかかりつけ医がより密に連携を取ることで市民の身近な相談先が拡充され、プログラム終了後も継続的に薬剤師の健康相談が受けられる関係性を築けることが特徴。全国で同モデルを導入しているのは多摩市を含め6自治体だという。
昨年は29人が修了
初めて実施された昨年度は、判定基準を満たす対象者526人のうち、プログラム参加申込み者は38人。15の薬局でプログラムを受け、修了者は29人だったという。相談を受けた(株)大和調剤センターウラン薬局(多摩センター)の薬剤師・有安千代さんは「毎日飲んでいる薬が何で出されているか改めて確認できたり、もう一歩踏み込んだ説明ができるようになった。プログラムが終わっても薬局で指導を行っていく関係ができている。意義のある取り組みだと思う」と話す。
今年度も同事業を実施するため、昨年の特定検診の結果から対象者へ、6月以降に支援事業の通知が送付される予定。市保険年金課では「糖尿病性腎症への移行が防げたかどうかがわかるのはもう少し先。すでに専門家に相談されている人もいるが、より多くの方に参加してもらいたい。重症化す前の初期の段階で危機感を持ってもらいたい」と呼びかけている。
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