鶴牧西公園の隣に居を構える「川井家住宅主屋」と、同公園内にある「旧川井家住宅土蔵」がこのほど、国の登録有形文化財(建造物)に登録されることが決まった。市内の建造物が、国の登録有形文化財に登録されるのは今回が初。同公園にある多摩市指定天然記念物のシダレザクラとともに、両建物が並び立つ景観は、「多摩の原風景」として貴重な存在となっており、国土の歴史的景観に寄与していることから今回の登録が決まったという。
「有形文化財」とは、建造物、工芸品、彫刻、書跡、古文書、歴史資料などの有形の文化的所産で、国にとって歴史、芸術、学術上で価値が高いものの総称のこと。
1996年の文化財保護法の一部改正によって、保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物を、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する「文化財登録制度」が導入された。今年11月1日時点で、国に登録されている建造物の有形文化財は、都内で390件、全国で1万2261件。11月15日に行われた文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、新たに133件が登録されるよう文部科学大臣に答申された。そのうち、6件は都内の建造物で、「川井家住宅主屋」と「旧川井家住宅土蔵」も含まれている。今後、官報告示を経て正式に登録される。
多摩の原風景
「川井家住宅主屋」は、1885年(明治18年)頃に建設され、現在も川井家が居住する建物。一方、「旧川井家住宅土蔵」は、市指定天然記念物となっている樹齢200年を超えるとされる「シダレザクラ」とともに2011年4月に同から市に寄贈されたものだ。
川井家は、正確な来歴は不明ながらも、江戸時代以前から鶴牧に居を構える庄屋で、幕末から明治にかけては大型養蚕農家だった。茅葺きだった建物は現在、金属板仮葺となっているものの、2層の蚕室がある造りは当時のまま。多摩ニュータウンの開発によって、古くからあった建物が姿を消していった中で、以前と変わらぬ場所に残り、かつその姿を残している貴重な建物だ。
多摩市教育委員会では「多摩ニュータウンの開発によって、急激な都市化の中で失われた市内に唯一残された『多摩の原風景』を文化的景観として保存し、後世に継承していく」ことを目的に、川井家住宅主屋と、隣接している土蔵、シダレザクラ、3つの文化財が並び立つ景観を国の登録有形文化財にと文化審議会に申請。その結果、建造物が建築後50年を経過し、国土の歴史的景観に寄与していることから、国の有形文化財に登録されることになった。
国の有形文化財登録の一報を聞いた川井家では「古い家で昔は冠婚葬祭も、他の家と同様にこの家でやっていた。住むには不便ではあるものの、多摩ニュータウンの中で古い家がなくなっていく中で、国の文化財になるのは光栄なこと」と話している。
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