「世界の医療団」の一員として東日本大震災の被災地支援を続けている 小綿 一平さん 伊勢原まごころクリニック院長 59歳
遅咲きのチャレンジャー
〇…実は医師としては遅咲き。スポーツ用品メーカーの社員として安定した生活を送っていた43歳の時、「若いころからの夢を追いかけよう」と決意。約20年の社会人生活に区切りをつけ、東海大学医学部を受験した。当時、子どもはまだ園児。選択に迷いはなかったのか聞くと「マイナス思考ですから」と意外な答えが。「入試本番が怖いから、これで落ちたら悔いはないと思えるまで勉強するのみでした」。そんな冷静な努力が実を結んだ。
〇…東京都目黒区に生まれ、中学からは主に横浜で暮らした。医学部入学を機に一家で伊勢原へ。「きれいな街並みと温かい人柄が好きですね」。勤務医を経て2011年4月、クリニックを伊勢原駅北口に開業したのはそんな思いから。趣味はランニングで、大山登山マラソンにも10回以上出場。「5Kmを20分で走ることが今後の目標」で、毎日のトレーニングも欠かさない。来年還暦を迎えるが「年齢は関係なし。つねにチャレンジしていきたい」とにっこり。前向きな姿勢と優しい人柄が魅力だ。
○…クリニックを開院する直前に東日本大震災が発生した。たまらず、2011年5月、医師不足が報じられていた相馬市に入り、被災者の心のケアにあたった。津波で子を失った母親、家はあっても帰れない人たちにふれ「持続的支援が必要」と痛感。翌年から「世界の医療団」の一員として、相馬市のボランティア診療に参加している。先月で現地入りは30回を数えた。
〇…世界の医療団は、10カ国以上に支部を持つ国際NGOで、災害・紛争地域における中長期のボランティアが主な活動。クリニックの仕事を終えた最終金曜の夜中に伊勢原を出発し、土曜は朝から夕方まで診察。その後、夜中に伊勢原へ戻り、翌日の診察に備える生活を続ける。「もうボランティアは必要ないよ、と言われるまで頑張りたいと思います」。笑顔の裏には強い覚悟があった。