2月6日に文化会館で開催の「“おおやまみち”まちづくりサミット」で基調講演を行う 中平 龍二郎さん 大山道研究家 78歳
古道ある限り歩く
○…演題は「楽しく歩く大山街道 歴史と地形を見る」。大山詣のルートとして庶民に利用された大山道の研究過程で、1万2千Km以上を実際に歩き、膨大な量の文献や資料を読み漁った。今回の基調講演では、来場者に地図を配り、郷土の姿や大山道の成り立ちに迫る。「観光地化されておらず、生活道路としてあるがままの姿で現代に残る。そんな大山道の魅力をお伝えできれば」と意気込む。
○…東京都世田谷区に生まれた。幼少期を戦時下で過ごし、疎開先の愛媛で終戦を迎えた。先行き不安のなか、各国の切手を集め、広い世界に思いを馳せるのが楽しみだった。関心は次第に地図や地名に移り、大学卒業後は地図出版社に就職。一般的な道路地図にくわえ、公共工事や防災用の地図も手がけた。「地図を作るには実際にそこを歩く必要がありますから、仕事は大変でした」と振り返る。結婚は32歳の時。2人の子どもに恵まれた。現在は川崎市に妻と暮らす。
○…大山道を研究するきっかけは、40年ほど前。近所を散歩していた時だった。「地元農家の方が”ここは大山道で山頂につながっているんですよ”って」。幅2mほどの小道だったが、壮大な歴史ロマンを足の底に感じた。以来、関東一円にあるおよそ30の大山道を歩き、定年退職後に大山道のガイド本を出版した。情熱に裏打ちされた知識と考察は高い評価を得、行政や旅行会社から講演依頼が舞い込む。野外講座などを含めると、年120本以上の仕事をこなしている。
○…趣味はやはり「歩くこと」。普段から地図を片手に興味を持った場所に向かう。「90歳になっても歩きたいですから、健康管理は欠かせません」と運動の大切さを強調する。大山登山はこれまでに70回以上。昨年12月には4歳の孫と頂上に立った。「ここ数年は鎌倉道の研究も進めています」と充実した表情。前に古道がある限り、歩みを止めることはない。