伊勢原市乳牛改良同志会の会長を務める 荒井 新吾さん 西富岡在住 49歳
牛と郷土に注ぐ愛
○…酪農がさかんな伊勢原で牛を育て27年。現在は2月25日に行われる牛の品評会「伊勢原ホルスタインショー」の準備に奔走する。品評会を主催する伊勢原市乳牛改良同志会の会長として休みなしの多忙な毎日を送るが、表情は絶えず笑顔だ。「伊勢原の土の上で育った自慢の牛たちの晴れ舞台。酪農仲間と手を取り合って頑張りたい」。感染病などの報道も少なくないなか「安全に配慮し品評会を迎えたい」と意気込みを語る。
○…40頭ほどの牛が参加し顔や乳房の形などを競い合う品評会はさながら「牛の美人コンテスト」。牛の改良では雌雄の掛け合わせやえさの選び方などが特に難しく、生き物を相手に苦労は絶えない。視線の先にあるのは入賞ではなく手塩にかけて育てた牛たちの元気な姿だけ。「長生きして、たくさんの乳を出してほしい」と目を細める。
○…西富岡出身。子どものころは外で泥だらけになって遊ぶ「野生児」だった。山王中学を卒業後、農業高校に進み、18歳で乳製品の製造業に就いた。しかし、「家業を継ぎたい」との思いが募り、21歳で実家に戻った。同じころ周囲の勧めで地元消防団へ。「仕事との両立は難しい部分もあるが自分の活動が地域のためになれば」という郷土への思いがあり、今も現役だ。
○…3月6日生まれの丑年。「『ミルクの日』に生まれたんだよ。縁を感じるよね」と冗談交じりに笑う。家庭では3人の子どもの父親だ。長男は独立し、下の2人も成人間近。子どもたちに家業を継いでほしいと思うこともあるが、「尊重するのは本人の意思。酪農の世界への道筋だけは用意する」と親の表情を見せる。趣味を尋ねると「仕事」ときっぱり。「次の世代を担う子どもたちに、牛を通して地域や生死、環境問題にも目を向けてほしい」と語る。品評会まで2週間。郷土のあすにも思いをはせる。