11月3日に行われた「明治神宮奉納全国弓道大会」有段者の部で優勝した 大谷 靖子さん 高森在住 55歳
弓道は生活の一部
○…背筋を伸ばして、射位と呼ばれる位置に着く。そこから28m先にある的を両目で見つめ、弓を引く。「当たってほしい」「外れたらどうしよう」といった感情が湧いた時点で、矢はそれるという。射場に入り、行射までの流れを無意識に、正確にできるかどうか。この”ルーティーン”の精度が勝敗を左右する。明治神宮奉納全国弓道大会では、それが見事にはまった。5連続で的を射抜き、726人の頂点に立った。「矢を当てようとはまったく。何か不思議な力というか、運を感じます」と無欲の勝利をかみしめている。
○…川崎市宮前区に3人姉弟の次女として生まれた。「好奇心が旺盛だった」と振り返る幼少期。身体を動かすことが好きで、地元の中学ではバレーボール部に所属した。その一方で琴の教室にも通い「着物姿で演奏することが楽しかった」と当時をなつかしむ。高校、専門学校と進み、24歳で結婚した。2人の娘に恵まれ、その後、夫の仕事の関係で17年前に伊勢原へ。子育てが一段落した42歳の時、高校生だった長女と外出中に見かけたのが「初心者弓道教室」の看板だった。
○…「袴姿にあこがれた娘に引っ張られて始めてみたんです」。伊勢原弓道協会に入り、弓道場での稽古が始まった。「なかなか思うように矢が飛んでくれない」「所作の一つひとつが細かく規定され、覚えることが多い」…。初心者がぶつかる壁にも「教わりながら上達することが楽しかった」と、仕事をしながら競技を続けてきた。趣味を尋ねても弓道ときっぱり。「弓は私の生活の一部です」と充実した表情で言い切る。
○…現在、夫と2人で暮らし、娘が孫を連れて里帰りする年末年始を今から心待ちにしている。三が日は愛情のこもったおせち料理と雑煮を振る舞うつもりだ。「いつも応援してくれる家族への感謝を忘れず、これからも精進いたします」。11月29日の県予選にむけ、今日も弓を引く。