横須賀市 空き家居住の促進図る 低価格、閑静さで若者取込む
横須賀市は市内に点在する谷戸地域の空き家増加抑制として、子育て世代や学生などの入居促進を目的とした「空き家バンク」を立ち上げた。谷戸地域で最も空き家率の高い汐入5丁目2区をモデル地区に、ホームページ上で不動産取引が困難な土地・建物を紹介、所有者と利用希望者のマッチングを支援する。
細い路地や階段が入り組む「谷戸」と呼ばれる地域は横須賀特有の地形。明治初期から軍港の関係者らが居住する際、市街地に近い山地や丘陵地が宅地として利用されたことから、市内には今も49の谷戸地域が存在する。近年では、全市的に少子高齢化が進んでいるが、谷戸地域でも所有者の高齢化に伴って平地への住み替えや亡くなるケースが増え、空き地や空き家も増加している。そのほとんどが車の横付けできない階段道路に面している地形の特性上、平地と比較して管理に手間がかかることなどから取扱いを敬遠する不動産業者もおり、新たな居住希望者は少ない。
一方で、谷戸ならではの利点もある。まず、周囲は自然が豊かで閑静な住環境が整っている点。そして購入・借りやすい低価格な物件が多い点だ。市はこれらの特徴を活かし、静かな環境下でゆったり子育てをしたい世帯や、体力があって階段を苦にしない若い大学生などにお買い得物件としてPR、居住を促すネットワークを整備。先月末からモデル地区に対象を絞り、「空き家バンク」を立ち上げた。横須賀特有の谷戸居住をブランド化することで急激な空き家増加の抑制、地域の活性化を図りたい考え。谷戸地域に空き物件を有する地元不動産会社からも歓迎の声が上がっている。
稲荷谷戸で試験実施
モデル地区に選ばれたのは汐入5丁目2区(稲荷谷戸)。市が平成22年から23年に行った空き家実態調査で、空き家率18・5%と市内で最も高い地域だ。谷戸の入口からおよそ200段の階段や坂道を上った先にも住宅が連なり、住人の3人に1人以上が高齢者という現状に頭を悩ませている。
今回の取り組みで定義する谷戸とは、自動車が通行できる道路から概ね40段以上(高低差10m程度)の階段がある場所。対象は原則、不動産業者が取り扱わない土地・建物の売却と賃貸物件と定めている。例えば、200段の階段がネックになっている敷地面積303平方メートルの木造平屋建ての賃貸物件の場合、家賃は約4万円(敷金礼金、管理費別)。市内の相場と比べると3割ほど安価で、既に希望者による問合せもあるという。
同地の空き家数は50を超えており、市都市計画課は所有者に対して空き家バンクへの登録、制度活用を促していく。今後は効果を検証しながら順次、地域を広げていく方針。
ハード面も支援手厚く
モデルとなった稲荷谷戸では、既に高齢者の平地転居助成や、県立保健福祉大学などの学生居住支援が行われている。さらに今年度からは「空き家バンク」に掲載した物件が売買や賃貸のリフォーム工事費の助成をはじめ、空き家解体費、売却に向けた測量や登記手数料の補助も開始。また、町内会に家屋などを寄付した場合の解体・測量・登記に関する費用の助成も受けることができる。
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