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横須賀版 公開:2012年1月1日 エリアトップへ

タウンレポート 災害ボランティアの今、これから

文化

公開:2012年1月1日

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市民ボランティアバスでの活動の様子(写真上:7月、下:11月)
市民ボランティアバスでの活動の様子(写真上:7月、下:11月)

 東日本大震災から約10ヵ月。横須賀に住んでいる私たちも、災害時の「もしも」に不安を感じることも多かったのではないだろうか。それと同時に、被災地支援を通して「ボランティア」のあり方を見つめ直す機会にもなったはずだ。天災はいつ、どこで起こるか分からない―。その備えとして、横須賀市内には『横須賀災害ボランティアネットワーク』が組織されている。震災以降の同団体の動きから見えた、新たなボランティアの「芽」と「災害ボランティア」のこれからを探っていく。

震災の教訓、地域に生かせ

 災害時の「ボランティア元年」と言われるのは阪神大震災。もちろんそれ以前から、ボランティア活動は行われてきていたが、これまでボランティアに参加したことの無かった人も多く携わるきっかけとなった。そして14年前、福井県三国町で発生したタンカー重油流出事故。横須賀では海岸清掃作業の支援をきっかけに『横須賀災害ボランティアネットワーク』を設立。以降、市内では「災害ボランティア養成講座」「寒冷期宿泊体験」など継続した活動を行うほか、国内の災害援助活動にも参加する。

「3・11」以降の災害ボランティアの変化

 同ネットワークでは震災時、まず県の災害ボランティアネットワークと協働で、県内一時避難所(神奈川県立武道館)で約1ヵ月、支援活動を行った。続いて5月以降は、県ネットの「ボランティアバス」で被災地に赴き、家屋の泥出しや清掃に従事した。そして7月から11月にかけて、横須賀市社会福祉協議会と共催で横須賀発の「市民ボランティアバス」を運行。同ネットワークスタッフを含め、計6便・延べ240人近くの市民が被災地(岩手県山田町ほか)に向かった。

 一般参加者の顔ぶれは多様だった。高校生から70代まで「災害のボランティアは初めて」という人が大半。だが「何ができるか分からないが、少しでも力になれば」という想いは共通のものだった。泥出しや片付け・清掃が中心だったが、「この体験を活かしたい」と話す高校生もいた。「経験を地域にフィードバックすることも大切」とスタッフ。達成感と共に得るものは大きかったようだ。

 そして、計6回のバス派遣のうち、11月の第6便は参加者を公募しなかった。「よこすかボランティアセンター」に加盟しているボランティア団体を伴い向かった先は岩手県釜石市。仮設住宅近くに「釜石お訪ね隊〜サロンよこすか」を開設した。傾聴・布おもちゃ・おもちゃ修理…災害とは結びつかないようなボランティアが、ここでは大活躍だった。「力仕事はできないけど、自分のボランティアがここで役立つと思わなかった」。参加した年配女性は一様に口を揃える。

 心のケアや生活支援といったニーズの変化に対応したものだが、「できること」に照らしていくと「ボランティア参加」の裾野が広がっていることが分かる。既存ボランティア団体の「横のつながり」も生まれた。「災害ボランティアの新たな層の掘り起こしにもなった」とスタッフ。同ネットワークでは、今後の動きとして、被災地側と連携しながら、こうした精神面のケアに重点を置いた活動に軸足を据えたい考えだ。

ボランティアへの関心を地域防災につなげるには

 「ボランティアは、災害が起きたときにだけ活動するものではないのです」。同ネットワークの佐々木さんは強調する。横須賀がいつ被災地になるか分からない。そこで何を「備える」のか。今回の震災で、被災地には「ボランティアに参加したい」という人が大挙して押し寄せた。しかし、支援物資と同様に「必要な箇所に的確に供給すること」が必要になる。

 災害時、横須賀市では地域防災計画(平成21年改定)の中で市社会福祉協議会(市総合福祉会館)に「災害ボランティアセンター」を設置する流れを定めている。その運営に協力するのが「災害時ボランティアコーディネーター」だ。一般ボランティアの受け入れ、派遣指示や活動支援、ボランティア関連の情報発信、行政(市災害対策本部)や市内外の団体との連絡調整など役割は多岐にわたる。

 同ネットワークでは、こうしたシステムの確立に加え、ボランティアコーディネートに必要な知識・技術を学ぶ「コーディネーター養成講座」にも力を入れる。毎年2回(昨年は震災の影響で1回)養成講座を行い、これまで約10年で修了者は260人。先月、浦賀地区で行われた講座には、大学生から70代まで定員を超える参加者が集まった。ボランティアバスへの参加をきっかけに、「自分の住む地域でできることを」と受講した人も多かったという。「関心が高くなっていることは非常に良いこと」(スタッフ)としながらも、実際に”動ける”コーディネーターの数の把握や研修、地域による偏りなど課題も抱える。

 今、横須賀でできるのは被災地への支援・ボランティアだけでなく、地域防災への取り組みを改めて見直すことではないか。私たちはこの震災で、こうした「考える機会」を与えられた。その「きっかけ」を無駄にしないために、何ができるのか。今年は、それを考え、動く1年になりそうだ。
 

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