美術館活用 私はこう考える 2 「エリア一帯で新たな形へ」 小林照夫 横須賀美術館評価委員会委員長
――吉田市長の就任以降、横須賀美術館のあり方は、昨年度の「ラルク展」をはじめとして集客が重視されるようになった。
「人が集まらないことに対しては、行政として対策を考えなければならないだろう。しかし、(美術館への)アクセスが良くないことは最初から分かっている。人が来ないから何かをしようと動くだけでなく、都市の核(コア)をどうつくるかを考え、エリア全体を魅力あるものにすることが大事だ。その時の市長の勢いや市議会の考えとは別のところで、もう一度都市のデザインをする必要がある。(企画ものなど)一時的なことで終わってしまえば、文化的・経済的資産は蓄積されていかない」
――具体的にどのような位置づけができるか。
「例えば横須賀中央や汐入は市内経済の中心であるし、衣笠は三浦一族の歴史がある。そう考えた時、『海の手文化』をキーワードに久里浜・浦賀・観音崎を、横須賀のひとつの拠点として捉えるべきだ。ペリー来航や、日本で最初の西洋式灯台の観音埼灯台、浦賀ドックの重工業など、ここには日本の近代化を見て取れる。これらと美術館をひとつのものとして位置づければ、『近代と現代の対話』ができる場所になり得るし、市民の帰属性にも結びつく。鑑賞のための美術館だけでなく、子どもの情操教育としての活用を含めた新たな形も模索できるのではないか」
――市の財政状況から、指定管理者制度を導入すべきとの意見もある。
「美術館だけで採算をとるのは難しい。まずは指定管理者制度を導入することで、どの程度収支が改善するのかが明らかになったところから議論が始まる。経営的な視点では、今後例えばチケットの裏に広告を入れるなどの方法も考えられる」
――専任の館長が不在であることの影響は。
「予算を少なくできるという意味ではひとつの合理性だが、作品を借りる際にも館長の存在は大きいと考えている。責任者を置いて運営することは必要だ」
――美術館評価委員会(※)ではどのような議論を。
「(ラルク展などの)企画についての賛否は分かれる。また、所蔵作品を充実させるということに対してなど、厳しい意見もある。有名画家の作品を購入するには莫大な費用もかかる。そうした舵取りは難しいが、マイナス面を捉えるばかりでなく、前向きに美術館のあり方を考えたい」
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※評価委員会は、年に2〜3回実施。学芸員、商工会議所、小学校、市民などが委員に選ばれている。
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