神奈川報道写真連盟の第34回公募展で大賞を受賞した 内田 賢智(けんち)さん 大鋸在住 68歳
「いま」を切り取る目
○…3枚組の作品「当世寝姿三様」で大賞に。「女性の『いま』を切り取りたくて」と話す同作は、朝の小田急片瀬江ノ島駅ホームのベンチでうずくまる夜遊び明けと思しき2人組や、足を伸ばしてシルバーシートに横たわる女性など、街の中で堂々「眠る」女性の姿を写したもの。「いまは強い女性の時代。寝姿にその象徴が見えた。何気なく通り過ぎてしまう中に撮るべきテーマが隠れていますね」と熱が込もる。
○…写真との出会いは18歳の頃。風景などを撮り歩いたが、自身の原点は23歳の時の「秘境の集落」という作品。岐阜と富山の県境の山奥にある集落がダムに沈むことを聞きつけ、バスを乗り継ぎ山道を3時間かけて歩いた。白川郷の合掌造りなど、今でこそ古い建物が評価されるが、「昔は平気で沈めてしまっていた。いてもたってもいられなくて」。仕事や結婚、子育てなどで写真を離れた時期もあったが、定年を機に再びカメラを手にした。
○…写真は「光と影の芸術」。単に明るければ良いというのではなく「花を撮る時には曇りや雨の方が良い時もある」とコツを教えてくれた。動く被写体に対しては「一瞬を切り取るか、わざとブレさせるか」で全く別の作品に。例えば同じ滝でも、シャッター速度によって水飛沫(しぶき)が上がる豪快さと、凛としたイメージの両極の表現が出来るという。人物写真は、会話やコミュニケーションをとりながら撮影すると笑顔が引き出せる。「後で送ってあげると喜んでもらえますよ」と目を細める。
○…現役時代は建設会社に勤務。自宅や浜見山の交番、ビックカメラ(当時・さいか屋)などを手がけた。現在は写真のほかに陶芸や木製模型、ペーパクラフトなど多趣味。すべて本からの独学だとか。「自分で勉強すれば上達できるものが好きです。いつまでも勉強ですね」と笑顔を見せた。
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