第43回日展、彫刻の部で内閣総理大臣賞を受賞した 親松 英治さん みその台在住 77歳
「自分を解放できた」
○…先月28日、日展の会期初日に行われたオープニングイベント。懇親会の席で受賞を告げられた。「いきなり知らされて。ほっとした。挫折の連続で、何十年もかかってしまった」。26歳から出品、作品を作り続けてきた。「若い頃は、貧乏でもプライドだけは高くて、5年も経たないうちに審査員になってやるなんて考えていた」と振り返った。
○…受賞作は、春の訪れを喜ぶ馬が稲妻に打たれ、驚いて足を跳ね上げる様を表現した「春雷(しゅんらい)」。樹脂製で高さ225cm、ラッカーや漆を使い色入れした。作風をこれまでの写実的なものから抽象的なものへと一気に変えて量感を出したこの作品は、評者に「生命感のある秀作」と言わしめた。
○…ネットやスピードの現代に「何か違うんじゃないか、何か足りない」と思い、「もっと良いものが作れるんだがな」と作品の完成度にも不満を持ち続けてきた。転機は今夏の終わり。30代の頃に作った「馬」の作品を見た先輩の先生に「面白い、新鮮な感じがする」との言葉をかけてもらった。「これでいいんだ」。自身の中でうごめいていたものが爆発、二カ月で作り上げた。「惰性から抜け出し自分の姿を初めて出すことができた」。
○…新潟県の佐渡島で生まれ育つ。5人兄妹の真ん中。子どもの頃から絵を描くのが好きだった。「親戚に絵描きがいたが、生活が苦しく、父から絵描きにはしたくないと言われた。でも、彫刻はわからないと反対はされなかった」。東京に暮らしたが、友人の紹介を機に藤沢へ移り住み、30年以上が経つ。「佐渡と似て、海のある所が好き」と目を細める。
○…現在、仕事とは別にイエスを抱いたマリア像を制作している。完成すれば20mの巨大な木彫になる。「年齢との闘いだけど、最後まで仕上げたい」と力強い意気込みを見せた。
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